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新型コロナウイルスは物体上でどのくらい感染力を持つのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスのエアロゾル感染.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2020年3月17日ウェブ掲載された寄稿記事で、
今回の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の、
空気中や物体上での感染力保持期間を、
実験的に検証したデータの概略です。

前回3月10日のブログ記事で、
同様の内容をご紹介しましたが、
それは今回のウイルスの実験結果ではなく、
これまでの他のコロナウイルスの実験結果のまとめでした。

ようやく今回の新型コロナウイルスの動態が、
実験で検証されたのです。

今回の検証ではSARSの原因ウイルスであるSARS-CoV-1と、
今回の新型コロナウイルスで同じ検証を行って、
両者の動態を比較しています。

その結果、
エアロゾルとして高濃度のウイルスを空気中に散布すると、
実験で規定された3時間後にも、
ウイルスは検出が可能でした。
(3時間を超える測定はしていない、ということのようです)
その半減期は1.1から1.2時間と計算されました。
つまり、ウイルス粒子は空気中では不安定で、
かなり短時間で減衰するけれど数時間は残存する、
という結果です。

物体上では銅や段ボールの上より、
プラスチックやステンレスの上でより安定していて、
プラスチックやステンレス上では、
72時間後にもウイルスは検出可能でした。
ただ、プラスチック上では72時間後に、
ステンレス上では48時間後には、
ほぼ感染力はないレベルまで減少していました。

銅ではSARS原因ウイルスは8時間後に、
今回の新型コロナウイルスでは4時間後に、
ウイルスは感染力を失っていました。

段ボール上ではSARS原因ウイルスは8時間後に、
今回の新型コロナウイルスは24時間後に、
ウイルスは感染力を失っていました。

総じて今回の新型コロナウイルスの動態は、
ほぼSARS原因ウイルスと一致していて、
その接触感染や飛沫核感染のリスクも、
SARS原因ウイルスと同等であると考えられました。

エアロゾルとして3時間ということが、
ネット記事などでは「空気感染の可能性」として、
喧伝されていますし、
確かに上記論考の文面においても、
「エアロゾル感染の可能性」が強調されていることは確かです。
ただ、基本的にこのデータの読み方としては、
このウイルスは空気中ではそれほど長時間は生存出来ず、
数時間以内には感染力はなくなるので、
密閉した小空間に長時間滞在する、
というような状況では飛沫核感染も可能性はあるものの、
かなり限定的にしか起こらない、
というように想定するのが妥当であるように思います。
現行の感染事例としては、
ライブハウスやバーなどでは、
飛沫核感染が起こっている可能性はあるのです。

そしてこれは実際には、
たとえばインフルエンザウイルスでも、
同様にありうる現象なのです。

新型コロナウイルスの感染は、
その多くは飛沫感染と接触感染によって起こる、
と言って大きな問題はないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 1

おたからや

はじめまして。大変参考になりました。今までは接触のみだと思っていて、エアロゾルについてはまだ研究途中とか。いろいろなニュースや健康情報を見て、自分の身を守るためにはマスクなのか?と考えさせられました。インフルエンザも毎年怪しくなるので、これから気をつけようと考えています。
by おたからや (2020-03-24 17:11) 

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