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新型コロナウイルス感染症の上気道ウイルス量の推移 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスの上気道ウイルス量.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2020年2月19日にウェブ掲載された、
新型コロナウイルスSARS-CoV-2)の上気道感染についての、
書簡形式の論考です。

ここでは17名の新型コロナウイルス感染症で、
発熱などの症状のある患者さんに対して、
経時的に鼻腔と咽頭の検体を採取して、
その推定されるウイルス量の推移を検証しています。
家族内感染で無症状である患者1名においても、
同様の検証を行なっています。

その結果、
症状のある患者さんでは、
症状出現とほぼ同じ時期には、
既に鼻腔や咽頭にウイルスは検出されていて、
推定されるウイルス量は、
咽頭より鼻腔の方が多くなっていました。

無症状の1名の患者においても、
同様の咽頭や鼻腔におけるウイルス量の増加は認められていて、
症状のあるなしに関わらず、
想定される潜伏期の終わりから、
少なくとも5日間は周辺に感染力を持つことが、
推測ではありますがほぼ確認されました。

このウイルスの上気道での検出のパターンは、
SARSを引き起こしたコロナウイルスより、
インフルエンザに似たパターンであると説明されています。

SARSは症状のない潜伏期には感染力はほぼなく、
症状が出現してから早い時期に上気道のウイルス増加は始まって、
10日後くらいにピークに達します。
そして血液中でウイルスに対する抗体が増加する14日後くらいになると、
ウイルス量も減少します。

一方でインフルエンザは、
症状の出現する少し前からウイルスの上気道での増加は始まり、
症状の出現時にはほぼピークに達しています。

症状の出た時点で14日間の隔離という、
新型コロナウイルス感染症の現時点での対策は、
このウイルスがSARSコロナウイルと同様の性質を持っている、
ということを前提としていた訳ですが、
それは異なっている可能性が高いのです。

現状の問題は今回の新型コロナウイルスが、
無症状の時期にも感染力を持っていることで、
通常の症状が出現した時点からの対応では、
その封じ込めは困難である理由の1つは、
この点が原因であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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加藤

石原先生、いつもお世話になります加藤です。一つ質問させて
ください。春休みなので中学生の息子を連れて帰省したいので
すが、一人暮らしの父は83歳です。息子も私も元気ですが、
気づかないうちにコロナにかかっているのでは、と思うと帰れ
ません。(息子は乾いたような咳払いのようなものが習慣に
なっているので特に気になります)
新学期が始まったらもう帰省の時間はないし、それに高齢の父
もいつまで元気か、と思うと、今しかチャンスはないのに、と
歯がゆい思いです。石原先生が同じ立場なら、どうされます
か?前例のない事態に、何が大切なのか、わからない日々で
す。
by 加藤 (2020-03-17 16:58) 

fujiki

加藤さんへ
お父様が今お元気でしたら、
今は長距離の移動は避けて頂いた方が良いかも知れません。
ただ、これはもケースバイケースと思いますので、
感染予防に留意しながら予定通り、
ということも勿論ありだとは思います。
by fujiki (2020-03-19 06:38) 

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