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新型コロナウイルスの2つのタイプについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスの2つのタイプ.jpg
National Science Review誌に2020年3月3日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスの2つのタイプについての論文です。

北京大学などの研究者によるもので、
一般にも報道されるなどして話題になりました。

ただ、この区分けが臨床的に意味のあるものかどうか、
と言う点については、
どちらかと言うと否定的な意見が現時点では多いようです。

この論文においては、
103名の新型コロナウイルス感染症の患者さん由来の、
ウイルス遺伝子を解析し、
その遺伝子配列の微妙な差異について検証しています。

その結果、
ウイルス自体はほぼ同一であったものの、
特徴的な2つのSNPs(一塩基多型)が認められ、
それにより28144という部位でアミノ酸がロイシンになるものをL型、
セリンになるものをS型と上記論文の著者らは命名しています。

そして、
この変異により新型コロナウイルスを2つに分けると、
L型が70%を占め、S型が30%を占めることが確認されました。
遺伝子の系統的な解析から、
S型がより古く、
途中でL型が生まれた可能性が示唆されました。

ここまでは一応事実と言って良いものです。

ただ、新聞記事などでは、
S型はより重症化し易く致死率が高く、
そのため流行は拡大しにくく、
その一方でL型は重症化はより少ないものの、
感染はより広がりやすいと説明されていますが、
そうした推測はあまり論文上では重視されていませんし、
何より症例の詳細がそれほど明確に分かっているものではないので、
そこまでのことが言えるデータではありません。
S型の方が毒性が強いという性質が、
別に証明されている訳ではないからです。

また、そもそも2つのSNPsでウイルスを分類することが、
妥当であるかどうかははなはだ疑問で、
単純にウイルス遺伝子の変異の解析から、
1つのパターンとして仮定されているだけです。

今後はS型に的を絞った対策が必要ではないか、
というところまで突っ込んだ解説もありましたが、
もうそこまで行くと、
砂上の楼閣のようなあやふやな議論に過ぎません。

個人的な意見としては、
そこまで明確な差異が、
この2つのタイプにあるとは考えにくく、
マイナーな変異を針小棒大に表現しているだけのように、
現時点では思われます。
シンプルに考えれば2つの一塩基多型が見つかる程度で、
今回の新型コロナウイルスの遺伝子は、
現時点ではほぼオリジナルのままに維持されながら、
世界中に感染を広げているという想定の方が、
より確からしい見解であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 3

熱心な読者

お世話になっております。
フランスの厚生大臣オリヴィエ・ヴェラン氏が、コロナウイルスに関して、イブプロフェンを服用しないほうがよいと推奨したらしいのですが、なぜなのかを教えていただけると幸いです。よろしくお願いします。
by 熱心な読者 (2020-03-15 21:12) 

fujiki

熱心な読者さんへ
今日の記事で元ネタをアップしました。
もうご存じかも知れませんが、
ご参考にしていただければと思います。
by fujiki (2020-03-19 06:14) 

熱心な読者

ありがとうございました!拝見させていただきました。
これからも、コロナはじめ病気の解説や映画や舞台の感想など、楽しみにしていますのでよろしくお願いします。
by 熱心な読者 (2020-03-21 23:20) 

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