ダイアモンド・プリンセス号新型コロナウイルス集団感染の解析 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2020年2月28日のJournal of Travel Medicine誌にウェブ掲載された、
先日全乗員乗客の下船が終了した、
ダイアモンド・プリンセス号でのCOVID-19のアウトブレイクが、
収束した経緯を、
疫学的にまとめた論文です。
(ダイヤモンドかダイアモンドか、
というのはまちまちなのですが、
感染研でダイアモンドと記載されているので、
今回はダイアモンドとしています。
「ダイヤ」って変ですよね)
2020年の2月3日にクルーズ船ダイアモンド・プリンセスにて、
船内に10名の新型コロナウイルス感染者が確認されました。
これがアウトブレイクの発端となり、
2月19日の時点で3700名(論文中の記載です)の乗客乗員のうち、
17%に当たる619名の感染が確認されるまでに広がりました。
1月25日に香港で下船した乗客が、
その起点であったことがほぼ明らかになっています。
1月31日に横浜港に接岸し、
症状のある乗員乗客にはPCR検査を施行して、
新型コロナウイルス遺伝子が陽性となった患者は、
日本国内の病院に移送して治療。
症状のない乗員乗客は14日間船内で隔離する、
という措置が取られました。
その後も紆余曲折があり、
現場の混乱や二次感染など、
多くの問題を孕みながらも、
漸く3月1日に全ての乗員乗客は船を離れ、
まだ、下船者からの感染者など、
問題が全て解決した訳ではありませんが、
ダイアモンド・プリンセス号のアウトブレイク(これは論文での記載です)は、
ほぼ終息を迎えることになったのです。
今回の論文では、
主に船内患者発生からのタイムラインで、
どのように感染が広がり終息したかを、
疫学的に解析しています。
基本的には感染症研究所が会見で発表した、
データが元になっていると思われますが、
論文の執筆者はヨーロッパの研究者になっています。
日本人の名前は1つもありません。
何故このような形での論文化となったのかは、
よく分かりません。
それではこちらをご覧ください。
これは横軸が時間軸で、
縦軸は基礎再生産数(R0)を示しています。
R0というのは、
その時点で1人の患者が何人に感染を広げるのかを、
示す数値です。
中国でまとめられた疫学データによれば、
その感染拡大初期におけるR0は、
2.2と算出されています。
その後は3を超えているという推測もあります。
この数値が1を上回っている限り感染は拡大します。
従って、感染を封じ込めるためには、
感染者を隔離するなどして、
この数値を1に近づけ、それより低下させる、
という必要がある訳です。
このグラフを見ると、
当初のR0は14.8と算出されています。
1人から15人近くに感染するということですから、
かなり深刻な状態であったことが分かります。
空気があまり動かない場所で、
数千人の人間が接触しつつ暮らすという環境では、
こうした感染の広がりを見せるのです。
それが横浜港に接岸して、
患者の振り分けと船内隔離などの対策が取られてから、
1週間後くらいに劇的に低下しています。
計算上R0は1.78程度まで低下し、
その後はその水準で推移しています。
1を切ってはいないので、
何もしなかれば再び感染は拡大する訳ですが、
通常の感染対策を行なっていれば、
感染はそれほど拡大することなく、
トータルには終息に向かうのです。
1人の患者が発病してから、
感染した次の患者が発病するまで、
中国での初期のデータでは平均7.5日と計算されていますから、
概ねその期間で感染拡大が阻止されたということは、
基本的には感染対策が奏功したことを、
示していると思われます。
その一方でこの論文においては、
早期に全ての乗客を船から降ろし、
海外の乗客は母国に帰すような対応を取れば、
より感染者の数は抑えられた可能性が高い、
という推計も同時に行なっています。
指摘されているように、
船内の感染対策には多くの問題があり、
多くの混乱やミスもあった訳ですが、
それでも一貫した対応を取ることにより、
感染の封じ込めは一定レベルは可能であることを、
今回のケースは示しているように思います。
新型コロナウイルス感染症を正しく怖がる、
というのはおそらくそうした意味であると思います。
今の対策の効果、
皆さんが日々気を付けていることの効果は、
概ね1週間程度で形となって現れるのですが、
それは後から計算した場合の話で、
実感としてそれが感じられるのは、
おそらく1か月程度は経ってからのことではないかと思います。
矢張り今を正念場と考え、
出来ることを積み重ねるしかないと、
個人的にはそう考えています。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
(付記)
論文の内容に沿い、
部分的に補足し一部修正しました。
(令和2年3月15日午後8時53分)
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2020年2月28日のJournal of Travel Medicine誌にウェブ掲載された、
先日全乗員乗客の下船が終了した、
ダイアモンド・プリンセス号でのCOVID-19のアウトブレイクが、
収束した経緯を、
疫学的にまとめた論文です。
(ダイヤモンドかダイアモンドか、
というのはまちまちなのですが、
感染研でダイアモンドと記載されているので、
今回はダイアモンドとしています。
「ダイヤ」って変ですよね)
2020年の2月3日にクルーズ船ダイアモンド・プリンセスにて、
船内に10名の新型コロナウイルス感染者が確認されました。
これがアウトブレイクの発端となり、
2月19日の時点で3700名(論文中の記載です)の乗客乗員のうち、
17%に当たる619名の感染が確認されるまでに広がりました。
1月25日に香港で下船した乗客が、
その起点であったことがほぼ明らかになっています。
1月31日に横浜港に接岸し、
症状のある乗員乗客にはPCR検査を施行して、
新型コロナウイルス遺伝子が陽性となった患者は、
日本国内の病院に移送して治療。
症状のない乗員乗客は14日間船内で隔離する、
という措置が取られました。
その後も紆余曲折があり、
現場の混乱や二次感染など、
多くの問題を孕みながらも、
漸く3月1日に全ての乗員乗客は船を離れ、
まだ、下船者からの感染者など、
問題が全て解決した訳ではありませんが、
ダイアモンド・プリンセス号のアウトブレイク(これは論文での記載です)は、
ほぼ終息を迎えることになったのです。
今回の論文では、
主に船内患者発生からのタイムラインで、
どのように感染が広がり終息したかを、
疫学的に解析しています。
基本的には感染症研究所が会見で発表した、
データが元になっていると思われますが、
論文の執筆者はヨーロッパの研究者になっています。
日本人の名前は1つもありません。
何故このような形での論文化となったのかは、
よく分かりません。
それではこちらをご覧ください。
これは横軸が時間軸で、
縦軸は基礎再生産数(R0)を示しています。
R0というのは、
その時点で1人の患者が何人に感染を広げるのかを、
示す数値です。
中国でまとめられた疫学データによれば、
その感染拡大初期におけるR0は、
2.2と算出されています。
その後は3を超えているという推測もあります。
この数値が1を上回っている限り感染は拡大します。
従って、感染を封じ込めるためには、
感染者を隔離するなどして、
この数値を1に近づけ、それより低下させる、
という必要がある訳です。
このグラフを見ると、
当初のR0は14.8と算出されています。
1人から15人近くに感染するということですから、
かなり深刻な状態であったことが分かります。
空気があまり動かない場所で、
数千人の人間が接触しつつ暮らすという環境では、
こうした感染の広がりを見せるのです。
それが横浜港に接岸して、
患者の振り分けと船内隔離などの対策が取られてから、
1週間後くらいに劇的に低下しています。
計算上R0は1.78程度まで低下し、
その後はその水準で推移しています。
1を切ってはいないので、
何もしなかれば再び感染は拡大する訳ですが、
通常の感染対策を行なっていれば、
感染はそれほど拡大することなく、
トータルには終息に向かうのです。
1人の患者が発病してから、
感染した次の患者が発病するまで、
中国での初期のデータでは平均7.5日と計算されていますから、
概ねその期間で感染拡大が阻止されたということは、
基本的には感染対策が奏功したことを、
示していると思われます。
その一方でこの論文においては、
早期に全ての乗客を船から降ろし、
海外の乗客は母国に帰すような対応を取れば、
より感染者の数は抑えられた可能性が高い、
という推計も同時に行なっています。
指摘されているように、
船内の感染対策には多くの問題があり、
多くの混乱やミスもあった訳ですが、
それでも一貫した対応を取ることにより、
感染の封じ込めは一定レベルは可能であることを、
今回のケースは示しているように思います。
新型コロナウイルス感染症を正しく怖がる、
というのはおそらくそうした意味であると思います。
今の対策の効果、
皆さんが日々気を付けていることの効果は、
概ね1週間程度で形となって現れるのですが、
それは後から計算した場合の話で、
実感としてそれが感じられるのは、
おそらく1か月程度は経ってからのことではないかと思います。
矢張り今を正念場と考え、
出来ることを積み重ねるしかないと、
個人的にはそう考えています。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
(付記)
論文の内容に沿い、
部分的に補足し一部修正しました。
(令和2年3月15日午後8時53分)
2020-03-05 07:08
nice!(7)
コメント(1)
Cruise Ship Carrying Sick Passengers Being Held Off Coast Of California For Testing
March 4, 2020 at 3:21 pm
http://sanfrancisco.cbslocal.com/2020/03/04/coronavirus-princess-cruise-san-francisco-held-off-coast/
by サンフランシスコ人 (2020-03-06 03:44)