SSブログ

新型コロナウイルス72314名のまとめ(中国CDCの報告) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は別件で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルス中国全例まとめ.jpg
JAMA誌に2020年2月24日ウェブ掲載された、
中国CDCによる2月11日時点までの国内全症例、
72314例をまとめて解析した解説記事です。

これは2月28日付でWHOの報告書が出ていて、
そちらは少し例数は増えているのですが、
基本的にはほぼ今回と同様のデータが報告されています。
つまり、WHOの報告書の、
こちらは露払い的な、
ダイジェスト的な内容のものです。

その臨床的特徴ですが、
まずこちらをご覧下さい。
コロナウイルス臨床まとめ.jpg
全例の臨床的特徴のまとめです。
診断事例の中には遺伝子検査では確認されていないものもあり、
遺伝子検査が陽性で症状のない無症候性感染の事例は、
全体の1%程度です。
これは無症候性の感染が、
それほど多くはないことを期待はさせますが、
無症候の感染者が全例検査されている、
という訳では勿論ないので、
慎重に判断する必要があります。

年齢分布は10誌未満と10から19歳は、
それぞれ1%と明確に少なく、
30から79歳が87%を占めています。

病気の重症度でみると、
軽症の事例が81%、
肺炎による呼吸苦などが見られる重症事例が14%、
そして呼吸不全やショック、多臓器不全などを来した、
重篤事例が5%となっています。

よく言われる「8割が軽症」というのは、
このデータが元になっています。

ここで致死率をみると、
トータルでは2.3%、
80歳以上の致死率は14.8%、
70代の致死率は8.0%、
そして重篤事例の致死率は49.0%となっています。

次にこちらをご覧下さい。
コロナウイルス全例の経過の図.png
これは活字が細かくて見づらいと思いますが、
横軸が2019年12月8日から2020年2月11日までの時間経過を示し、
棒グラフは患者数の推移です。
グレイの棒グラフは症状出現時点を示し、
オレンジの棒グラフは診断の時点を示しています。

これを見ると患者数のピークは、
症状出現時点では1月26日くらいにあり、
今後は徐々に終息に向かうことが推測はされます。

これは今後に期待を持たせるデータですが、
まだ慎重に推移を見守る必要はあります。

次にこちらをご覧下さい。
コロナウイルスとSARSの比較の図.jpg
これは右側が今回の新型コロナウイルス感染の推移を、
左側が2002年から2003年のSARSの時の経緯を示したものです。

その発症はほぼ同時期に始まっていますが、
SARSの場合患者数が5000例に達したのは、
最初の患者が出現しておよそ5ヶ月後ですが、
今回のCOVID-19では最初の患者が出現してから2ヶ月で、
患者数は7万人を超えているのです。
ほぼ同様の性質を示し、
遺伝子にも高い相同性がありながら、
この2つのウイルスの感染の広がりは、
大きな違いがあることが分かります。

勿論今回の方が格段に感染の広がりが早く深刻なのです。

これまでの断片的な情報からは、
日本での事例も今回まとめられた臨床傾向と、
ほぼ同じであるように思われますが、
今後日本でも同様の検証が、
まとめられることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(6)  コメント(1) 

nice! 6

コメント 1

watcher

初めまして。

いつも、冷静で正確でその上、心洗われる情報を発信して頂きありがとうございます。

「抗体依存性感染増強現象」を検索して、こちらを見させて頂いて以来、医学的に正確な情報を得たくて、見させて頂いております。

さて、28日のWHOの報告書において

「3子ども(Children)(11ページ)18歳以下の個人に関するデータでは、この年齢群への比較的低い罹患率が示されている(すべての報告症例の2.4%)。武漢市では、ILI検体を検査したうち、2019年の11月~12月および2020年の1月第1~2週に陽性となった例はなかった。手元のデータからは、また血清学的調査の結果がないことからも、子どもの感染の程度、子どもが感染に果たす役割、子どもの方が感受性が低いのか、あるいは臨床的な症状が異なるのか(すなわち全般に症状が軽いのか)、判断することは不可能である。合同ミッションは子どもの感染者について、大部分が大人の家庭内の接触者追跡調査により特定されていることを認識した。合同ミッションチームが面談調査した人々が、子どもから大人への感染が起こったエピソードを思い出せなかったことは指摘するに値する。」(厚労省の翻訳PDFより)

の部分。

唯一、データとして意味のあるのは、武漢における、2019年の11月~12月および2020年の1月第1~2週でのデータだけではないか?と考えています。

ただ、中国では、春節以降現在に至るまで、延長を繰り返して学校を休校にしているようです。(この件、私は、上海日本人学校のホームページ等から情報を得ています。)
ですので、中国は、子供に関して、発表している以外のデータを実は持っている可能性もあるのでは?と考えています。少なくも、子供の感染者数が少ない事と学校の長期休校には、関連があると考えられるのでは?(ただし、成人の休業の状況が把握出来ていないので、明言は出来ませんが。)

一方、日本では、厚労省が一斉休校と前後して、「無症状のこどもから家庭の高齢者等への感染の危険性がある」という内容の発信をしていたと記憶しています。(ソース?)わたしは、北海道で最初に一斉休校が決まった経緯を見ても、実は日本での検疫データでは、この危険性を示すエビデンスが得られているのでは?と推測しています。(ただし、これは、かなり繊細な部分を含むため・・・・)

先生にお聞きしたいのは、ウイルス感染症において、年齢によって、感染力(被感染力ではなく)の違いが有る、という事は有り得るのか?という点です。


なお、この件について調べている際に、とても良質な情報を発信されてる、ページを見つけましたので、勝手ながらシェアさせて下さい。

https://news.yahoo.co.jp/byline/yuheisuzuki/20200227-00164829/

新型コロナウイルス、情報が届きにくい方(子ども・外国語話者・視覚/聴覚障害等)のサポート・不安のケア
鈴木悠平 | LITALICO 社長室 チーフエディター / soar理事
2/27(木) 7:02

です。

長いコメントになってしまいました。お忙しい所、読んで頂き、ありがとうございました。今後も、拝見させていただくとともに、心より応援させて頂きます。

感染拡大をとどめられる事、また、パニックを発生させずに、社会的経済的ダメージをなるべく減らす事が出来るように、せつに祈っています。


by watcher (2020-03-08 21:35) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。