SSブログ

マクロライドを妊娠中に使用することのリスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療となります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
マクロライドの妊娠中の使用リスク.jpg
2020年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
妊娠中の抗菌剤使用のリスクについての論文です。

妊娠中の抗菌剤の使用にはリスクがありますが、
それでも感染症の時には、
使用が必要となるケースがあります。

そうした時に安全性が比較的確認されている抗菌剤は、
ペニシリン系の抗生物質であることは、
世界的にほぼ一致している事実です。

ただ、ペニシリンには特有の薬疹やアレルギーがあり、
その使用が困難なケースで、
現状多く使用されているのがマクロライド系の抗菌剤です。
エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンが、
その代表になります。

それでは、マクロライド系抗菌剤の、
妊娠中の安全性については、
どのくらいのことが分かっているのでしょうか?

これまでの複数の介入試験やシステマティックレビューの結果として、
マクロライド系抗菌剤の使用が、
妊娠の有無に関わらず、
不整脈のリスクを増加させ、
心疾患に伴う死亡のリスクを増加させる、
という知見が得られています。
このため、アメリカとイギリスにおいて、
心血管疾患のリスクが高い患者さんに、
マクロライドを使用することは警告の扱いとなっています。

妊娠中のマクロライドの使用についての、
最近のシステマティックレビューによると、
その使用により流産のリスクが増加することは、
ほぼ間違いのない事項とされていますが、
それ以外の先天奇形などについては、
明確な結論が得られていません。

そこで今回の研究では、
イギリスの医療データベースを活用して、
マクロライドもしくはペニシリンの処方を、
妊娠4週から出産までの間に受けた104605名の、
妊娠中の女性とその子供と、
母親が妊娠前にマクロライドもしくはペニシリンを処方された、
82314名の子供、
そしてその兄弟を比較して、
この問題の検証を行っています。

その結果、
お子さんの主な身体奇形のリスクは、
母親が妊娠初期にペニシリンを使用した場合、
新生児1000人当たり17.65件に対して、
母親が妊娠初期にマクロライドを使用した場合には、
新生児1000人当たり27.65件で、
妊娠中のマクロライド使用の、
ペニシリンと比較した新生児の身体奇形発症リスクは、
1.55倍(95%CI:1.19から2.03)有意に増加していました。

マクロライドの妊娠中の使用は、
その全期間において、
新生児の性器奇形のリスクを、
1.58倍(95%CI:1.14から2.19)有意に増加させ、
その多くは尿道下裂の増加でした。

エリスロマイシンの妊娠初期における使用は、
赤ちゃんの主要な身体奇形のリスクを、
ペニシリンと比較して1.50倍(95%CI: 1.13から1.99)、
こちらも有意に増加させていました。

このようにマクロライド系の抗菌剤の妊娠中の使用は、
その時期にかかわらず胎児の発達に一定の影響を与え、
複数の身体奇形のリスクを上昇させることは、
今回の結果ではほぼ間違いがなく、
妊娠中のマクロライド系抗菌剤の使用は、
今後より慎重に考えた方が良さそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(5)  コメント(0) 

nice! 5

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。