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麻疹由来ワクチンで新型コロナウイルスを予防する [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスと麻疹ワクチン.jpg
2018年のMicrobe and Infection誌に掲載された、
新型コロナウイルスワクチンの開発に繋がる可能性のある、
技術についての総説です。

現状SARSやMERSを始めとするコロナウイルスに対して有効なワクチンは、
その開発に成功していません。

その原因は単一ではありませんが、
風邪症候群の原因であるコロナウイルスは、
同一の人間に何度も感染するという性質があり、
麻疹や水痘のように、
一度感染して中和抗体が作られれば、
それで一生罹ることはない、
というような病気とは違うという点が、
大きいと考えられます。
先日一度新型コロナウイルスに感染して回復してから、
またほどなく新型コロナウイルスに再感染した、
という事例が報道されていました。
その真偽はまだ分かりませんが、
コロナウイルスに感染して誘導される免疫の予防効果は、
インフルエンザほども長持ちはしない可能性が高いのです。

つまり、単純にインフルエンザワクチンのような手法で、
コロナウイルスに対するワクチンを作ることは出来ないのです。

それでは、どうすればいいのでしょうか?

1つのヒントはSARSと同じように、
今回の新型コロナウイルス(COVID-19)も、
小児には感染しにくいか、
感染しても軽症で改善する可能性が高い、
という現象にあります。

その理由は現時点では不明ですが、
1つの仮説として、
赤ちゃんが1歳半くらいまでの時期に、
風疹や麻疹のワクチン、ポリオワクチン、日本脳炎ワクチン、
インフルエンザワクチンなどの、
多くのコロナウイルスと同じRNAワクチンの接種を、
受けていることと関連があるのではないか、
という考え方があります。

こうしたワクチンで誘導される免疫が、
他のRNAウイルスの予防にも、
一定の役割を果たしているという可能性があるのです。

中でも麻疹の生ワクチンは、
2回の接種を行うだけで、
非常に強く中和抗体を誘導し、
長期に渡り感染予防効果を示すことが知られています。

この麻疹ワクチンの有効性を利用して、
麻疹ワクチンを土台としたワクチンに、
別のRNAワクチンの抗原を発現させることで、
有効性の高いワクチンを作るという試みが、
これまでに複数行われています。

SARSについても、
これまでに複数の麻疹ワクチン由来のワクチンが開発され、
動物実験などでは高い有効性が確認されています。

ただ、現状人間への臨床試験においては、
まだ明確な有効性と安全性とが確認されたものはないようです。

現状WHOは18ヶ月以内に、
新型コロナウイルスのワクチンの実用化を、
目標として掲げていますが、
SARSやMERSのワクチンも、
結局は実用化されていない現状を考えると、
その実現性は、
それほど楽観出来るようなものではなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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サンフランシスコ人

新型コロナウイルスを治療する?

http://www.ketv.com/article/clinical-trials-for-first-drug-to-treat-coronavirus-begin-at-university-of-nebraska-medical-center-covid/31099043

Clinical trials of drug to treat coronavirus begin at University of Nebraska Medical Center

Updated: 7:41 AM CST Feb 26, 2020
KETV Staff Report

http://journalstar.com/lifestyles/health-med-fit/health/unmc-launching-clinical-trials-for-experimental-coronavirus-therapy/article_2c47f4dc-b87d-5602-9525-72baa6b2c07a.html

by サンフランシスコ人 (2020-02-27 04:01) 

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