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「1917 命をかけた伝令」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも中村医師が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
1917.jpg
サム・メンデス監督による米英合作映画で、
1917年第一次大戦時の実話を元に、
前線に攻撃中止の命令を届けるために、
2人の若い兵隊がひたすら歩き走り続ける姿を、
全編ワンカットに見える高度な映像技巧で描いた作品です。

これはともかく映像が圧倒的です。
昔のワンカット撮影というのは、
そのままカットを本当に割らずに、
全てを準備してそのまま回した訳で、
フィルムが15分くらいで1巻となっていて、
その間はそのまま演じ続けるという、
オースン・ウェルズの「黒い罠」のオープニングとか、
ヒッチコックの「ロープ」などが有名で、
内容より技巧を楽しむという趣向です。
今でも三谷幸喜さんは、
時々そうした試みをしています。

ただ、今回の作品はそれとは全く違っていて、
見た目としては全編2時間近く、
全くカットを割らずに、
たった1台のカメラで、
物語を捉え続けているように見えます。
戦場を走る2人の兵隊に、
常に1人のカメラマンが寄り添っている、
というイメージです。
しかし、実際にそんなことが出来る訳はないので、
CGなどの特殊効果を駆使して、
つぎはぎで撮った画像を、
それらしく見せている訳です。

これは凄いところは確かに凄いのですね。
予告編にもある、
戦場を横走りで駆け抜ける長い移動ショットや、
オープニングの狭い塹壕の移動から、
荒野に空間が広がってゆく辺り、
また遠くの空での飛行機の空中戦から、
みるみるこちらに墜落する機体が接近するところなど、
これまでの映画では、
あまり実現することのなかった奇観です。

ただ、その一方で物語自体はかなり単調で、
画面のリズムを超えて、
観客の心が躍動するような感じがありません。
また、途中で主人公の意識が飛ぶところで、
画面もブラックアウトしてしまうでしょ。
これをしてしまうと、
明らかにワンカットの流れが途切れてしまうので、
その点もかなりまずいな、
というようには感じました。

これね、全ての場面が圧倒的に凄ければ、
物語など単調でもいいと思うのです。
ただ、一部の場面は素晴らしくても、
段取り的な場面も多くて、
映像自体にも結構単調さがありますよね。
それがまずいのではないかと思うのです。
たとえば、タルコフスキーの「ノスタルジア」とか、
話は意味不明で共感不能でも、
映像の美しさと完成度の高さは最初から最後まで圧倒的なので、
それだけで成立しているような映画ですよね。
でもこの作品はそこまで圧倒的ではなく、
物語的には単調なので、
その点がこの作品の満足度を、
それほど高くないものにしている理由であるように感じました。
この単調さはだた、
イギリス映画的な雰囲気でもあって、
日本人にはハードルの高い世界なのかな、
というようにも思います。

そんな訳で、
やや中途半端な映画に終わっているのが残念ですが、
映像成果としては画期的なものがあり、
控え目に言って、一見の価値はあると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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