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大豆と発酵食品(納豆、味噌)の生命予後改善効果(多目的コホート研究) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
大豆と発酵食品(納豆、味噌)の生命予後改善効果(多目的コホート研究).jpg
2020年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
大豆食品の生命予後に与える影響についての論文です。
有名な日本の疫学データを解析した日本発の研究です。

大豆に含まれているイソフラボンというポリフェノールには、
血管の平滑筋の増殖を抑えるなど、
動脈硬化を予防するような作用のあることが報告されていて、
心血管疾患の予防や、
高血圧の予防に有効であるという可能性が示唆されています。

ただ、動物実験では高血圧予防効果が報告されている一方で、
大豆蛋白の摂取と高血圧との関連を検証したデータを、
まとめて解析したメタ解析の論文では、
あるものでは血圧降下作用が認められたとされている一方で、
別のものでは有意な降下作用が認められていないなど、
その結果は一定していません。

ここで1つ原因として考えられるのは、
大豆食品と大豆発酵食品(味噌や納豆など)との違いです。

大豆に含まれるイソフラボンは、
腸内細菌の働きによって代謝されてから吸収されるので、
その吸収には個人差があってかなり不安定なのですが、
発酵食品に含まれているイソフラボンは、
アグリコン型と呼ばれる小分子となっていて、
腸内細菌によらずにそのまま吸収されるからです。

今回の研究は、
日本の有数の大規模疫学データである、
多目的コホート研究のデータを活用して、
この問題を日本人で検証しています。

対象となっているのは、
登録時点で年齢が45から74歳のトータル92915名で、
食事アンケートから得られた、
大豆製品、大豆発酵食品(納豆、味噌)、豆腐の摂取量と、
14.8年という長期の経過観察における、
生命予後との関連を比較検証しています。

その結果、
トータルな大豆の摂取量と総死亡リスクとの間には、
有意な関連は認められませんでした。

しかし、納豆や味噌の発酵大豆食品の摂取量で見ると、
それを5分割して最も多い群は、
最も少ない群と比較して、
女性で10%(95%CI: 0.83 から0.97)、
男性で11%(95%CI: 0.80から0.98)、
総死亡のリスクがそれぞれ有意に低下していました。

また、納豆の摂取量が多いほど、
両方の性別において心血管疾患による死亡リスクが、
有意に低下していました。

このように今回の日本の疫学データにおいては、
大豆の発酵食品による生命予後の改善効果が認められました。

大豆の発酵食品が健康に良さそう、
という点では多くのデータがありますが、
このような大規模データで生命予後への効果が確認された、
というような報告はこれまでにあまりなく、
今後の検証にも期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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