「カツベン!」(周防正行監督) [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
周防正行監督の5年ぶりの新作は、
無声映画の黄金時代を舞台に、
おっちょこちょいで暗い過去を持ちながら、
活動弁士にあこがれた青年を主人公とした、
映画愛に満ちたコメディです。
これはなかなか良かったですね。
何故今「活弁」という感じはするのです。
80年代くらいの映画ならともかくなあ、
というようには思ってしまいます。
ただ、映画愛を強く感じる素敵な作品で、
考証も結構丁寧にされていると思いますし、
登場する無声映画を全部作ってしまうという、
こだわりも凄いと思います。
台本もなかなか完成度の高いもので、
キャストも主役の成田凌さんとヒロインの黒島由奈さんがフレッシュで良く、
脇も手練れで固めて良い芝居をしていました。
普通こうした映画だと、
すぐに「戦争の影」みたいなものが出て来るでしょ。
それを全くしなかったのも良かったと思います。
内容的には主人公の2人が子供時代に出会って、
「待っててね」と少年が言って結局戻れなくて、
10年後に再会するのですが、
結局同じ運命が待っている、
というのが周防監督らしいメロドラマで、
切なくて素敵でした。
ただ、観た多くの方が指摘しているように、
クライマックスのスラプスティックスがあまり盛り上がらず、
物語のほろ苦さが観客に伝わりづらかった、
というきらいがありました。
主人公がくすねたお金の行方や、
キャラメルの活かし方など、
台本はとても工夫されていると思いますし、
フィルムを悪党に滅茶苦茶にされてしまった主人公達が、
フィルムの残った断片を繋いで新しい作品を作り、
弁士の即興でドラマにする、
という趣向や、
映画館のスクリーンの裏の壁が壊れて、
そこから生身のラブシーンが見える、
という趣向など、
今までにない魅力的な場面も作っているのですが、
肝心の繋いだフィルムが、
どうもあまり面白くなかったのが残念でした。
これは大林宣彦監督が好きそうな趣向で、
大林監督ならもっと縦横無尽に遊んだと思うのですね。
それを同じようにやるべきだ、
とは決して思えないのですが、
繋げたフィルムの魔法に、
説得力がなかったのは、
ちょっと致命的であったようには感じました。
このように不満はあるのですが、
活弁を取り上げたこれまでの映画の中でも、
最も工夫された出色の1本であることは間違いがなく、
とても楽しい気分で劇場を後にすることが出来ました。
安定感のある良い映画で、
古くからの映画ファンにはお勧めの作品です。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
周防正行監督の5年ぶりの新作は、
無声映画の黄金時代を舞台に、
おっちょこちょいで暗い過去を持ちながら、
活動弁士にあこがれた青年を主人公とした、
映画愛に満ちたコメディです。
これはなかなか良かったですね。
何故今「活弁」という感じはするのです。
80年代くらいの映画ならともかくなあ、
というようには思ってしまいます。
ただ、映画愛を強く感じる素敵な作品で、
考証も結構丁寧にされていると思いますし、
登場する無声映画を全部作ってしまうという、
こだわりも凄いと思います。
台本もなかなか完成度の高いもので、
キャストも主役の成田凌さんとヒロインの黒島由奈さんがフレッシュで良く、
脇も手練れで固めて良い芝居をしていました。
普通こうした映画だと、
すぐに「戦争の影」みたいなものが出て来るでしょ。
それを全くしなかったのも良かったと思います。
内容的には主人公の2人が子供時代に出会って、
「待っててね」と少年が言って結局戻れなくて、
10年後に再会するのですが、
結局同じ運命が待っている、
というのが周防監督らしいメロドラマで、
切なくて素敵でした。
ただ、観た多くの方が指摘しているように、
クライマックスのスラプスティックスがあまり盛り上がらず、
物語のほろ苦さが観客に伝わりづらかった、
というきらいがありました。
主人公がくすねたお金の行方や、
キャラメルの活かし方など、
台本はとても工夫されていると思いますし、
フィルムを悪党に滅茶苦茶にされてしまった主人公達が、
フィルムの残った断片を繋いで新しい作品を作り、
弁士の即興でドラマにする、
という趣向や、
映画館のスクリーンの裏の壁が壊れて、
そこから生身のラブシーンが見える、
という趣向など、
今までにない魅力的な場面も作っているのですが、
肝心の繋いだフィルムが、
どうもあまり面白くなかったのが残念でした。
これは大林宣彦監督が好きそうな趣向で、
大林監督ならもっと縦横無尽に遊んだと思うのですね。
それを同じようにやるべきだ、
とは決して思えないのですが、
繋げたフィルムの魔法に、
説得力がなかったのは、
ちょっと致命的であったようには感じました。
このように不満はあるのですが、
活弁を取り上げたこれまでの映画の中でも、
最も工夫された出色の1本であることは間違いがなく、
とても楽しい気分で劇場を後にすることが出来ました。
安定感のある良い映画で、
古くからの映画ファンにはお勧めの作品です。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2020-01-19 08:52
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