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「孤独」を病気として捉える [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
孤独のインパクト.jpg
2015年のAmerican Journal of Public Health誌に掲載された、
孤独の健康面での影響を検証した論文です。

正直この論文単独では、
それほどの内容はないのですが、
特に先進国を蝕む大きな問題として、
問題提起的な意味で取り上げてみました。

ここに1つの病気があります。

伝染性のものではありませんが、
あたかも空気感染する感染症のように急激に増加していて、
パンデミックのように世界を襲っています。

その病気は2018年の統計によれば、
アメリカ人のほぼ半数が罹患していて、
その病気に罹ることにより、
死亡のリスクは26%も増加しています。

これは1日15本の喫煙に匹敵するような影響です。

この病気になることにより、
心血管疾患や肥満、高血圧、脂質異常症などのリスクは増加し、
精神疾患やうつ病、自殺などのリスクも増加します。

ここまで恐ろしい病気であるにも関わらず、
医者は概ねこれを病気として認識せず、
検診も行われていませんし、
有効な治療薬も開発されていません。

この病気の名前が「孤独」です。

日本でも「孤独死」のような言葉が、
クローズアップされたこともありましたね。

これは言わば「孤独」という病気の1つの症候です。

「孤独」は人間が作り出した病気です。

家族や地域社会、職場、町や国家というような、
集団に物語が用意され、
それが必要であるという意味付けが与えられて、
人間個人より集団の方がより重要である、
という価値観の元に、
その集団が迷いなく運営されていた時代には、
そうした「孤独」という病気は、
一部の集団から追放された人のみにしか、
存在しないものであったのですが、
個の価値が強調され、
個人という物が集団より尊いものだ、
というような考え方が広まると、
人間は所詮身勝手で利己的な生き物ですから、
集団の価値を否定するようになって、
多くの集団はその価値を低下させ、
崩壊に向かっているのです。

そこで増加するのが「孤独」という病であるのは、
理の当然と言えるのかも知れません。

さて、今回の文献では、
アメリカで60歳以上の一般住民に対して、
2008年と2012年に2回施行された、
健康調査のデータを活用して、
医療機関への外来通院と「孤独」との関連を検証しています。

この場合の「孤独」は、
単純に1人暮らしというだけではなく、
対面調査における複数の質問事項で推定されたものですが、
4年の間隔をおいた調査でいずれの場合にもみとめられた「孤独」は、
医療機関への通院の増加と結びついていました。

このように、
現代社会においての「孤独」が、
公衆衛生的な観点からは、
立派な病気であることは間違いがなく、
そうした観点でその予防や治療を考えることが、
もう必要である段階に至っているように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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