SSブログ

食事のコレステロールと心血管疾患リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コレステロールと心血管疾患リスク.jpg
2019年のCirculation誌に掲載された、
食事のコレステロールの摂取量と心血管疾患リスクについての、
アメリカ心臓病協会による提言です。

コレステロールの摂取量を減らすことは、
長く心血管疾患予防のための栄養指導の柱でした。

概ね1日コレステロールの食事からの摂取量が、
300ミリグラムを超えないようにすることが、
健康のためには重要であるとされてきました。

ところが、
2013年以降のアメリカ心臓協会とアメリカ心臓学会によるガイドライン
(AHA/ACCガイドライン)においては、
コレステロールの摂取目標値を設定せず、
2015年から2010年アメリカ政府機関が作成する、
アメリカ人のための食生活指針(DGA)においても、
同様の方針が踏襲されました。

健康のためにコレステロールを制限するという考え方は、
かなり明確に否定されたのです。

その説明は現行の臨床データや疫学データにおいて、
コレステロールの摂取量そのものと、
心血管疾患のリスクとの間に、
明確な関連があるという根拠が認められなかったから、
と説明されています。

今回の論文では、
その根拠となったデータが解説されています。

この考え方はちょっと誤解を招くところがあるのですが、
コレステロールは幾ら沢山摂っても良い、
ということではなく、
現代のアメリカ人一般への健康指導として、
コレステロールを制限するということの意義は薄い、
ということを示しているのです。

その点をもう少し細かく説明してみます。

まず、アメリカにおける成人のコレステロール摂取量は、
平均で1日293ミリグラム(95%CI: 284から302)で、
ほぼ摂取上限量とされる300ミリグラムを、
クリアしていることが分かります。
主なコレステロールの摂取源は、
肉類(シーフードを含む)、卵、穀類、乳製品となっていて、
このうち卵の摂取量についてはかなりのばらつきがあり、
コレステロールの摂取量が多い人では、
卵の摂取量がそこに大きく影響していることが示唆されています。

多くの観察研究と呼ばれる手法による疫学データでは、
コレステロールの摂取量と心血管疾患のリスクとの間には、
明確な関連が認められていません。
介入試験と呼ばれる厳密な手法を用いた臨床試験のデータを解析すると、
確かにコレステロールの摂取量と心血管疾患リスクとの間に、
一定の関連が認められますが、
501から1415ミリグラムという、
かなり極端に多くのコレステロールを摂取していて、
通常の平均的な食生活のレベルにおいては、
こうしたリスクの増加は問題にはならないと思われます。

ただ、今年発表されたアメリカのコホート研究の結果を、
まとめて解析したメタ解析の論文では、
1日半個の卵を余計に食べると、
心血管疾患のリスクは6%有意に増加する、
という結果になっていました。

このように、
臨床データは必ずしも一致していないのですが、
少なくとも通常のコレステロールの摂取量の範囲においては、
明かな心血管疾患のリスクの増加はない、
というのがこれまでの結論であるようです。

卵については、
1日1個までの摂取については、
ほぼノーリスクと考えて良いようですが、
それを超える摂取については、
問題ないという報告がある一方、
心不全などのリスクが増加する、
という報告もあるので注意が必要です。

また、コレステロールを含む食品には、
健康リスクを上げることがほぼ間違いない、
飽和脂肪酸が多く含まれているものが多く、
それがコレステロールの健康リスクとされるものの、
実体ではないかという見解もあります。

いずれにしても、
コレステロールは沢山摂っても問題ない、
ということではなく、
卵も1日2個以上摂れば一定のリスクは想定されるのですが、
殆どの方にとっては意識するべきはコレステロールの量ではなく、
ナッツや青味魚を多く摂るなど、
他の脂質とのバランスを考えることが、
コレステロールのことを気にする以上に、
大切なことであるのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(5)  コメント(0) 

nice! 5

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。