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羽毛ふとん肺の小児事例 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で外来は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
羽毛ふとん肺の事例.jpg
2015年のBMJ Case Rep.誌に掲載された、
小児の羽毛ふとん肺事例を紹介した論文です。

今日は日本でも報告の多いこの病気について、
まとめておきたいと思います。

まず事例を紹介します。
イギリスの事例です。

患者さんは12歳の男性で、
ゆっくり進行する食思不振と体重減少、
呼吸困難と空咳、胸部痛などの症状を訴えて受診しました。
病歴を聴取すると3年前にも同様の症状があり、
数ヶ月で自然に改善していました。
呼吸機能は低下しており、
軽度の運動で呼吸困難が生じる状態でした。

そのレントゲン写真がこちらです。
羽毛ふとん肺のレントゲン.jpg
微妙な変化ですが、
両肺の下方で血管の影が不明瞭となっており、
これをすりガラス状陰影と呼んでいます。
CT検査ではその部位で、
微小な粒状の陰影が認められました。

そこで気管支鏡検査など精査が行われました。

気管支鏡による肺生検の結果では、
過敏性肺炎の所見を認めました。

過敏性肺炎というのは、
アレルギー性の肺炎の一種で、
原因となる抗原を繰り返し吸入することにより、
Ⅲ型とⅣ型というタイプのアレルギー反応が起こり、
それが気管支から肺の組織に炎症を起こすという病気です。

原因としては家屋のカビや細菌、
キノコの胞子、ペットの鳥の排泄物、
牧草の細菌や塗料の成分などが原因抗原として知られています。

そして今回その原因抗原であったのが羽毛ふとんの羽毛です。

患者さんの環境の聞き取りをしたところ、
症状の出現した2010t年と2013年の両時期において、
患者の母親が羽毛布団を購入していました。

そこで羽毛関連の血液のIgG抗体を測定したところ、
上昇が認められました。

入院中には徐々に症状は改善し、
羽毛布団を廃棄するよう指示したところ、
退院後も状態は安定していました。

これが鳥関連過敏性肺炎、
そのうち羽毛布団が原因になっているものを、
特に羽毛ふとん肺と呼んでいます。

実はこの羽毛ふとん肺は日本で報告が多い病気なのです。

過敏性肺炎の初めての全国調査が1991年に行われ、
その結果では全体の7割が、
トリコプポロンという日本家屋に多いカビの一種を抗原とする、
夏型過敏性肺炎でした。

その結果をもって、
「過敏性肺炎の7割は夏型過敏性肺炎で、その原因はトリコスポロンというカビです」
という記載が専門家によってもしばしば行われています。

しかし…

過敏性肺炎には急性と慢性に分けられ、
1999年には多くの過敏性肺炎が慢性化することが示されています。
そして、慢性過敏性肺炎に限った2度目の全国調査が、
今度は2013年に発表されています。
これは2000年から2009年に報告された222例が対象となっていますが、
その結果は全体の6割を占める134例が、
羽毛ふとん肺を含む鳥関連過敏性肺炎で、
夏型過敏性肺炎はぐっと少ない33例、
という1991年の調査とはかなり異なる内容になっています。

これを見ると、
むしろ羽毛ふとん肺の方が、
過敏性肺炎の原因としてはずっと多い可能性があるのです。

羽毛ふとん肺は、
上記の事例のように、
家族の使用している羽毛布団からの発症事例もあり、
自分が使っていない布団であっても、
家の中に羽毛布団があれば否定は出来ません。

羽毛布団を購入してから生じるような咳や呼吸困難は、
羽毛ふとん肺の可能性を、
考えて検査を行う必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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