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非アルコール性脂肪性肝疾患と心血管疾患リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
NAFLDと心血管疾患リスク.jpg
2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
飲酒と関連のない肝臓病と心血管疾患との関連についての論文です。

肝機能障害が命に関わるのは、
肝硬変や肝臓癌になった場合で、
その原因としてはB型肝炎やC型肝炎による慢性肝炎や、
アルコール性肝障害が知られています。
ただ、最近それ以外で注目されているのが、
アルコールを飲まないのに脂肪肝や脂肪肝炎を発症し、
中には肝硬変に至り肝臓癌を合併する事例もある、
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)です。

NAFLDのうち、
肝臓の組織に通常の脂肪肝とは別個の所見を持ち、
進行性で肝硬変などのリスクの高い脂肪肝炎の状態を、
特にNASH(非アルコール性脂肪肝炎)と呼んでいます。

通常NAFLDは肝細胞への脂肪の沈着で始まり、
長い月日を掛けて、
肝臓の炎症と線維化とが進行して、
その一部がNASHの状態に至ると考えられています。

そのメカニズムは内臓脂肪の増加と関連していますから、
当然肥満や糖尿病とも関連の深い病態です。

従って、NAFLDのある人は、
心筋梗塞や脳卒中の発症リスクも高くなっています。

それでは、NAFLDは単純にメタボの1つの現れとして、
心血管疾患と関連があるのでしょうか?

それとも、NAFLD自体が、
インスリン抵抗性や肥満などとは独立した、
心血管疾患のリスクであると捉えるべきなのでしょうか?

これまでに何度かメタ解析の論文が発表されていますが、
NAFLDが独立して心血管疾患のリスクであるかどうかは、
論文によっても相違があり、
明確な結論が得られていませんでした。

そこで今回の研究では、
イタリア、オランダ、スペイン、イギリスの、
トータルで1700万人という巨大なプライマリケアのデータベースを活用して、
120795名のNAFLDもしくはNASHの診断事例を、
年齢などでマッチングさせたコントロールと比較して、
果たしてNAFLDが独立した心血管疾患のリスクであるかどうかを検証しています。

その結果、
年齢や喫煙歴のみを考慮して解析すると、
確かに心筋梗塞のリスクも脳卒中のリスクも、
NAFLD(NASHを含む)の患者さんで高いのですが、
そこに糖尿病や高血圧、
コレステロールなどの因子を補正して解析すると、
NAFLDによる有意なリスクの増加はなくなってしまいました。

要するに、
NAFLDはそれ自体が心筋梗塞や脳卒中の、
独立したリスクではない、
という結果です。

今回の検証はヨーロッパのみのものなので、
他の人種や地域では、
また別個の結果が得られる可能性がありますが、
単独で大規模な疫学データからの結論は、
これまでのメタ解析より信頼性が高いことは間違いがなく、
現時点ではNAFLDは独立した心血管疾患のリスクではない可能性が高いと、
そう理解しておいて良いように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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