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腎機能低下時のメトホルミンの有効性について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
メトホルミンの腎機能低下における有効性.jpg
2019年のJAMA誌に掲載された、
腎機能低下時のメトホルミンの有効性を、
SU剤と比較して検証した論文です。

メトホルミンはインスリン抵抗性を改善する作用を持つ、
飲み薬の血糖降下剤で、
血糖を低下させると共に、
糖尿病の患者さんの長期予後にも良い影響を与えることが、
精度の高い多くの臨床試験で実証されていることから、
2型糖尿病の基礎薬としての位置が、
世界的に確立されている薬です。

ただ、その副作用である乳酸アシドーシスのリスクが増加する懸念から、
腎機能の低下している患者さんに対しては、
慎重投与という対応が取られています。

腎機能は血液のクレアチニンという数値から推算される、
糸球体濾過量(eGFR)という指標で臨床的には区分けされます。

アメリカのFDAは、
現在ではこの指標が30mL/min/1.73㎡未満は、
メトホルミンの禁忌で、
45未満の時は新規導入は不可としています。

別のガイドラインにおいては、
30から60は慎重投与という扱いであったり、
30から45では低用量で使用する、
というように記載されているものもあります。

2018年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された論文では、
eGFRが30未満で乳酸アシドーシスのリスクが増加する、
という結果が得られていて、
現行のガイドラインを支持する内容となっています。

ただ、これは薬の安全性における検討であって、
腎機能が低下している患者さんでも、
低下していない患者さんと同等の有効性があるかどうか、
というような点については、
あまり明確なことが分かっていませんでした。

そこで今回の研究では、
アメリカの退役軍人を対象とした疫学データを活用して、
腎機能の指標であるeGFRの数値が60mL/min/1.73㎡未満であるか、
もしくは血液のクレアチニンの数値が、
男性で1.5mg/dL以上、女性で1.4mg/dL以上という、
顕性の腎機能低下のある2型糖尿病の患者さんにおいて、
メトホルミンとSU剤による単剤の治療が、
その後の心血管疾患の発症に与える影響を比較検証しています。

対象となっているのは、
上記基準による腎機能低下のある2型糖尿病の患者さんで、
メトホルミンを使用している24679名と、
SU剤を使用している2時以降を4799名です。
中間値でメトホルミン群が1.0年、SU剤群が1.2年の経過観察を行なったところ、
急性心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の発症リスクは、
SU剤と比較してメトホルミン群において、
20%(95%CI: 0.75から0.86)有意に低下していました。

このように、
軽度から中等度の腎機能低下において、
従来広く使用されていたSU剤と比較して、
メトホルミンは安全性に遜色がないばかりか、
その心血管疾患予防の有効性も、
優れていることが確認されたのです。

現状日本においても、
eGFRが30mL/min/1.73㎡を超えていれば、
メトホルミンの継続治療には大きな問題はなく、
腎機能が低下すれば適宜減量しつつ継続し、
45を超えていれば新規の開始にも大きな問題はない、
というように考えて良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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