SSブログ

ソフトドリンクと死亡リスク(2019年ヨーロッパの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ソフトドリンクと死亡リスク.jpg
2019年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
ジュースなどのソフトドリンクを飲む習慣と、
生命予後との関連を検証した論文です。

砂糖などの糖質を含むジュースなどの甘い飲み物が、
血糖値を上昇させて肥満の原因となり、
糖尿病や心血管疾患のリスクとなって、
生命予後にも悪い影響を与えることは、
これまでにも複数の疫学データで指摘をされていて、
そうした健康リスクを背景に、
イギリスでは砂糖税が導入されていることは、
これまでにも話題にしたことがあります。

その代用品として広く出回っている、
カロリーのほぼない人工甘味料を、
砂糖やブドウ糖の代わりに使用した飲み物の健康リスクについては、
砂糖加糖飲料と比べればリスクが少ないことは、
ほぼ間違いがありませんが、
一定の健康リスクがあるのではないか、
というようなデータや意見もあり、
その使用には賛否があって一定の結論には至っていません。

今回の研究はヨーロッパの10カ国において、
451743名の一般住民を中間値で16.4年という長期の経過観察を行っています。

その結果、
1日にソフトドリンク(砂糖加糖飲料と人工甘味料を含む)を、
250ミリリットルは飲まない人と比較して、
1日500ミリリットル以上飲む人は、
総死亡のリスクが17%(95%CI: 1.11から1.22)有意に増加していました。
これを砂糖加糖飲料と人工甘味料飲料に分けて分析すると、
砂糖糖加飲料では総死亡リスクは8%(95%CI: .1.01から1.16)、
人工甘味料飲料では総死亡リスクが26%(95%CI: 1.16から1.35)、
こちらも有意に増加していました。

死亡原因を癌と血管系の病気、消化器系の病気、その他、
に分けて分析すると、
総死亡と同様の比較において、
砂糖加糖飲料は消化器系の病気による死亡のリスクを、
59%(95%CI: 1.24から2.05)、
他方人工甘味料飲料は血管系の病気による死亡のリスクを、
52%(95%CI: 1.30から1.78)、
それぞれ有意に増加させていました。

これまで報告されたデータにおいては、
概ね体重増加や肥満と関連が高く、
血糖値の上昇や内臓脂肪の増加との関連が、
指摘されることが多かったのですが、
今回のデータでは肥満と飲み物との関連は、
それほど明確ではなく、
体重増加とは別個のメカニズムが、
ソフトドリンクと死亡リスクとの間にはあることを示唆しています。

また、これまでのデータでは、
人工甘味料飲料の健康リスクは、
砂糖加糖飲料のリスクよりは低いことが殆どでしたが、
今回は意外なことに、
総死亡のリスクは人工甘味料飲料の方が高くなっていて、
死亡原因にも差が認められました。

これは1つの可能性としては、
体調の悪い人が健康を気にして、
砂糖加糖飲料を避けて人工甘味料飲料に乗り換えた、
というようなバイアスの影響も考えられますが、
ひょっとしたら人工甘味料の現在認識されていないリスクの発見に、
繋がる可能性も秘めているような気もします。

今後の検証と知見の積み重ねに期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(6)  コメント(0) 

nice! 6

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。