ビタミンDの高用量のサプリメントの骨への影響 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2019年のJAMA誌に掲載された、
ビタミンDのサプリメントの骨に与える影響を検証した論文です。
ビタミンDというのは、
ビタミンという名前は付いていますが、
実際には身体でも合成されるステロイドホルモンの一種で、
カルシウムの吸収を促進するなど複数の作用を持ち、
健康な骨を産生し維持するのに不可欠な物質です。
その高度の不足があると、
骨軟化症(くる病)という病気になり、
骨の強度は失われて正常な発達も阻害されます。
従って、血液のビタミンD濃度が低下している時には、
適切にビタミンDを補充することは、
骨の健康のために必要な治療であることは明らかです。
それでは、
必ずしも高度の欠乏はないような場合にも、
ビタミンDを補充することは意味があるのでしょうか?
最近の多くの疫学データやメタ解析においては、
概ねあまり有効ではないという結果が多く報告されています。
ただ、使用されているビタミンDの用量はまちまちであるので、
通常の用量では効果はないけれど、
より高用量であれば有効な可能性がある、
という考え方も根強く残っています。
そこで今回の研究では、
カナダの単独施設において、
55から70歳の骨粗鬆症のない一般住民で、
血液の25(OH)Dレベルが30から125nnml/Lの311人を対象として、
本人にも実施者にも分からないように、
くじ引きで3つの群に分けると、
1群は1日400IUのビタミンDのサプリメントを、
2群は1日4000IUのサプリメントを、
3群は1日10000IUのサプリメントを使用して、
3年間の経過観察を行い、
その前後で骨密度と骨強度の測定を行っています。
血液のビタミンDの濃度は、
高度な欠乏や過剰はないレベルに設定されています。
通常欧米では400IU程度が、
サプリメントの通常量として設定されています。
ただ、実際には1000IUや10000IUのものも販売されています。
通常必要量は成人で200IUで充分と考えられていますから、
1000IUというのは明らかに過剰投与である訳です。
ちなみに日本においても、
少し前までは1日100から200IU程度のサプリメントが普通でしたが、
今ではネットなどを見ても、
1日1000IUのものが売れ筋1位になっていて、
輸入のサプリとしては、
1日10000IUのものも平気に売られています。
誰がどういう判断でこうした販売をしているのか、
それとも何も考えていないのか、
はなはだ疑問です。
今回の研究では、
通常の骨塩量のみの測定ではなく、
HR-pQCTという骨の構造を三次元的に解析出来る、
日本でも導入はされているもののまだ一般的ではない、
最新の機器を用いた解析が行われています。
その結果、
1日400IUの通常量のサプリメントと比較して、
4000IUと10000IUのサプリメント使用群では、
橈骨の骨塩量が有意に低下していました。
また、脛骨の骨塩量についても、
10000IU使用群では、
400IU使用群と比較して有意に低下していました。
骨強度の指標については3群で差はありませんでした。
要するにサプリメントとして高用量のビタミンDを摂取すると、
骨の量は増えないばかりか、
むしろより減少してしまう、
というちょっと恐ろしくなるような結果です。
このメカニズムは現時点では不明ですが、
高用量のビタミンDを持続的に使用することは、
骨代謝のバランスを崩し、
むしろ骨形成の抑制に働くという可能性は想定されます。
今回の結果はビタミンDサプリメントの高用量化に警鐘を鳴らすもので、
研究デザインが厳密で使用期間も3年と長いことから、
その結果はより深刻に捉える必要があります。
ビタミンDの使用は、
あくまで骨粗鬆症やカルシウム吸収の低下、
ビタミンD自体の不足を検証した上で行うべきもので、
不必要な使用は逆効果の可能性があることを、
念頭に置くべきではないかと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2019年のJAMA誌に掲載された、
ビタミンDのサプリメントの骨に与える影響を検証した論文です。
ビタミンDというのは、
ビタミンという名前は付いていますが、
実際には身体でも合成されるステロイドホルモンの一種で、
カルシウムの吸収を促進するなど複数の作用を持ち、
健康な骨を産生し維持するのに不可欠な物質です。
その高度の不足があると、
骨軟化症(くる病)という病気になり、
骨の強度は失われて正常な発達も阻害されます。
従って、血液のビタミンD濃度が低下している時には、
適切にビタミンDを補充することは、
骨の健康のために必要な治療であることは明らかです。
それでは、
必ずしも高度の欠乏はないような場合にも、
ビタミンDを補充することは意味があるのでしょうか?
最近の多くの疫学データやメタ解析においては、
概ねあまり有効ではないという結果が多く報告されています。
ただ、使用されているビタミンDの用量はまちまちであるので、
通常の用量では効果はないけれど、
より高用量であれば有効な可能性がある、
という考え方も根強く残っています。
そこで今回の研究では、
カナダの単独施設において、
55から70歳の骨粗鬆症のない一般住民で、
血液の25(OH)Dレベルが30から125nnml/Lの311人を対象として、
本人にも実施者にも分からないように、
くじ引きで3つの群に分けると、
1群は1日400IUのビタミンDのサプリメントを、
2群は1日4000IUのサプリメントを、
3群は1日10000IUのサプリメントを使用して、
3年間の経過観察を行い、
その前後で骨密度と骨強度の測定を行っています。
血液のビタミンDの濃度は、
高度な欠乏や過剰はないレベルに設定されています。
通常欧米では400IU程度が、
サプリメントの通常量として設定されています。
ただ、実際には1000IUや10000IUのものも販売されています。
通常必要量は成人で200IUで充分と考えられていますから、
1000IUというのは明らかに過剰投与である訳です。
ちなみに日本においても、
少し前までは1日100から200IU程度のサプリメントが普通でしたが、
今ではネットなどを見ても、
1日1000IUのものが売れ筋1位になっていて、
輸入のサプリとしては、
1日10000IUのものも平気に売られています。
誰がどういう判断でこうした販売をしているのか、
それとも何も考えていないのか、
はなはだ疑問です。
今回の研究では、
通常の骨塩量のみの測定ではなく、
HR-pQCTという骨の構造を三次元的に解析出来る、
日本でも導入はされているもののまだ一般的ではない、
最新の機器を用いた解析が行われています。
その結果、
1日400IUの通常量のサプリメントと比較して、
4000IUと10000IUのサプリメント使用群では、
橈骨の骨塩量が有意に低下していました。
また、脛骨の骨塩量についても、
10000IU使用群では、
400IU使用群と比較して有意に低下していました。
骨強度の指標については3群で差はありませんでした。
要するにサプリメントとして高用量のビタミンDを摂取すると、
骨の量は増えないばかりか、
むしろより減少してしまう、
というちょっと恐ろしくなるような結果です。
このメカニズムは現時点では不明ですが、
高用量のビタミンDを持続的に使用することは、
骨代謝のバランスを崩し、
むしろ骨形成の抑制に働くという可能性は想定されます。
今回の結果はビタミンDサプリメントの高用量化に警鐘を鳴らすもので、
研究デザインが厳密で使用期間も3年と長いことから、
その結果はより深刻に捉える必要があります。
ビタミンDの使用は、
あくまで骨粗鬆症やカルシウム吸収の低下、
ビタミンD自体の不足を検証した上で行うべきもので、
不必要な使用は逆効果の可能性があることを、
念頭に置くべきではないかと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2019-09-02 06:01
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