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脂質異常症に対するオメガ3系脂肪酸の効果(アメリカ心臓病協会の提言) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
AHAのEPAについての提言.jpg
2019年のCirculation誌に掲載された、
高トリグリセリド血症に対してオメガ3系多価不飽和脂肪酸を使用することの、
現状での考え方を示した、
アメリカ心臓病協会の指針です。

これは昨日ご紹介した、
EPAの有効性を実証した論文とも関連するものです。

中性脂肪(トリグリセリド)は、
コレステロールと並ぶ血液中の代表的な脂質で、
150mg/dL以上が異常値として認識されています。
高トリグリセリド血症の治療に対する考え方には、
現状日本と国外では大きな開きがあり、
日本では異常値であれば治療が検討されますが、
国外では概ね500mg/dL以上が治療対象となります。

150mg/dLを超える中性脂肪が、
心血管疾患のリスクになるという知見は多くあります。
ただ、あまり有効な治療薬はなく、
また治療をすることにより、
明確に心血管疾患のリスクやその予後が改善した、
という確証はあまりないので、
コレステロールと比べるとその評価は一致していませんでした。

アメリカ心臓病協会は2002年以降、
オメガ3系多価不飽和脂肪酸のEPAとDHAを、
高トリグリセリド血症の治療薬として推奨しています。
ただ、その裏付けとなるデータは、
その時点ではそれほど明確なものではありませんでした。

昨日ご紹介した論文では、
EPA製剤により心血管疾患のリスクが低下することが、
かなり明確に示されました。

そこにこれまでのデータをまとめて1つの考え方を示したのが、
今日ご紹介する提言です。

これによると、
EPAの単剤もしくはEPAとDHAの合剤を、
1日4グラム使用することで、
血液の中性脂肪が500mg/dL以上の状態では、
30%以上中性脂肪を低下させる効果が期待出来ます。
ただ、単剤で中性脂肪を正常化することは困難なので、
フィブラートなど他の薬との併用が通常は必要となります。

中性脂肪が200から499g/dLというより軽症の状態では、
同じくEPAもしくはEPAとDHAの合剤を、
1日4グラム使用することで、
LDLコレステロールを増加させることなく、
20から30%中性脂肪を低下させる効果が期待出来ます。

スタチンによるコレステロール低下療法に上乗せして、
EPAもしくはEPAとDHAの合剤を、
1日4グラム使用することで、
動脈硬化のリスクとなるnon-HDLコレステロールと、
リポ蛋白のアポBは低下し、
これは動脈硬化性疾患の抑制に有効であることを示唆しています。

1日4グラムまでのレベルでは、
大きな問題はありませんが、
EPA製剤単独と比較すると、
EPAとDHAの合剤ではLDLコレステロールは、
やや増加する傾向を示します。
つまり、これを超える用量は推奨されません。

EPAやDHAの製剤は概ね安全ですが、
有害事象としては吐き気などの消化器症状が多く、
この予防には食事と同時の服用が有効です。

2019年に発表されたREDUCE-ITという臨床試験の結果では、
1日4グラムのEPA製剤を、
心血管疾患のリスクのある脂質異常症の患者さんに、
スタチンへの上乗せで使用したところ、
心血管疾患の死亡を含むリスクを、
25%有意に低下させていました。
同様の臨床試験は他にも進行中のものがあり、
今後新たなデータが発表される予定です。

このように、
EPA単剤もしくはDHAとの合剤を、
1日4グラム使用することにより、
中性脂肪高値の患者さんにおいては、
心血管疾患のリスクがトータルに低下する作用が期待されます。

今回の提言はこれまでよりかなり踏み込んだもので、
中性脂肪高値の患者さんにおいては、
EPA製剤は第一選択に近い位置づけになったと、
そう考えても良いように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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