入浴が睡眠に与える効果について(2019年メタ解析) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2019年のSleep Medicine Reviewsに掲載された、
入浴やシャワーがその後の睡眠に与える影響についての論文です。
独立した臨床研究ではなく、
これまでのデータをまとめて解析した、
システマティックレビューとメタ解析による検討です。
寝る前にお風呂やシャワーを利用することが、
その後の眠りを改善するというのは、
ほぼ常識として捉えられている考え方です。
ただ、入浴が健康に良いという考え方は、
古代ギリシャのヒポクラテスの見解に既にあり、
16世紀のヨーロッパでは温泉が傷の治りを早くする、
というような考え方は見られますが、
寝る前の入浴がその後の睡眠に良い影響を与える、
という考え方自体は意外に新しく、
20世紀に入ってからのもののようです。
その後多くの臨床研究が発表され、
大部分は入浴が睡眠に与える影響を、
肯定的に捉えていますが、
個々の研究の条件はまちまちで、
個別の対象者数もそれほど多いものではないので、
現状入浴の睡眠への効果は、
確定的とは言えないのが実際です。
そこで今回の研究では、
これまで発表された報告のデータを、
まとめて解析する手法で、
この問題の現時点での評価を検証しています。
その結果、
湯温が40から42.5℃のお湯を利用した、
入浴やシャワー、足浴を、
睡眠の1から2時間前に10分以上行うことにより、
入眠までの時間が短縮し、
睡眠の質にも良い影響が見られることが確認されました。
暖かいお湯で適度に皮膚の表面を暖めることにより、
皮膚表面に近い部分の血流が増加し、
それに伴い深部の体温はむしろ低下します。
この深部体温の低下が睡眠を誘導するので、
スムースに睡眠に入りやすくなるというメカニズムが想定されています。
これ以上高い温度になると、
交感神経が緊張して深部体温も上昇するので、
睡眠には入りづらくなり、
これより低い温度では血流の移行や、
皮膚からの熱の発散がスムースに起こりません。
ただ、こうした知見はそれそれには、
少数の事例で検証されているだけなので、
入浴が睡眠に与える影響を科学的に実証するには、
より条件を一定にして例数を増やした検証が、
必須であると考えられました。
よく入浴による睡眠誘導の説明としては、
身体が一旦温められてそこから冷えるので、
その時に睡眠に入りやすいという説明がなされますが、
今回の論文に書かれていることはそうではなくて、
入浴は皮膚表面に血流を移動させることによって、
むしろ深部体温は低下させるので、
それが入眠の誘導に有効ということであるようです。
入浴にはその温度や時間や入浴法によっても、
様々な生理的変化の違いがあり、
睡眠への効果も決して一定のものではないようです。
ただ、一般の皆さんにとっては、
入浴により心地良く眠りに入れればそれで良いので、
こうした科学的検証は、
蘊蓄以上の意味はないものかも知れません。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2019年のSleep Medicine Reviewsに掲載された、
入浴やシャワーがその後の睡眠に与える影響についての論文です。
独立した臨床研究ではなく、
これまでのデータをまとめて解析した、
システマティックレビューとメタ解析による検討です。
寝る前にお風呂やシャワーを利用することが、
その後の眠りを改善するというのは、
ほぼ常識として捉えられている考え方です。
ただ、入浴が健康に良いという考え方は、
古代ギリシャのヒポクラテスの見解に既にあり、
16世紀のヨーロッパでは温泉が傷の治りを早くする、
というような考え方は見られますが、
寝る前の入浴がその後の睡眠に良い影響を与える、
という考え方自体は意外に新しく、
20世紀に入ってからのもののようです。
その後多くの臨床研究が発表され、
大部分は入浴が睡眠に与える影響を、
肯定的に捉えていますが、
個々の研究の条件はまちまちで、
個別の対象者数もそれほど多いものではないので、
現状入浴の睡眠への効果は、
確定的とは言えないのが実際です。
そこで今回の研究では、
これまで発表された報告のデータを、
まとめて解析する手法で、
この問題の現時点での評価を検証しています。
その結果、
湯温が40から42.5℃のお湯を利用した、
入浴やシャワー、足浴を、
睡眠の1から2時間前に10分以上行うことにより、
入眠までの時間が短縮し、
睡眠の質にも良い影響が見られることが確認されました。
暖かいお湯で適度に皮膚の表面を暖めることにより、
皮膚表面に近い部分の血流が増加し、
それに伴い深部の体温はむしろ低下します。
この深部体温の低下が睡眠を誘導するので、
スムースに睡眠に入りやすくなるというメカニズムが想定されています。
これ以上高い温度になると、
交感神経が緊張して深部体温も上昇するので、
睡眠には入りづらくなり、
これより低い温度では血流の移行や、
皮膚からの熱の発散がスムースに起こりません。
ただ、こうした知見はそれそれには、
少数の事例で検証されているだけなので、
入浴が睡眠に与える影響を科学的に実証するには、
より条件を一定にして例数を増やした検証が、
必須であると考えられました。
よく入浴による睡眠誘導の説明としては、
身体が一旦温められてそこから冷えるので、
その時に睡眠に入りやすいという説明がなされますが、
今回の論文に書かれていることはそうではなくて、
入浴は皮膚表面に血流を移動させることによって、
むしろ深部体温は低下させるので、
それが入眠の誘導に有効ということであるようです。
入浴にはその温度や時間や入浴法によっても、
様々な生理的変化の違いがあり、
睡眠への効果も決して一定のものではないようです。
ただ、一般の皆さんにとっては、
入浴により心地良く眠りに入れればそれで良いので、
こうした科学的検証は、
蘊蓄以上の意味はないものかも知れません。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2019-08-19 06:11
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