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紫外線はどう浴びるのが健康に良いのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ビタミンDと紫外線リスク.jpg
2016年のInternational Journal of Dermatology誌に掲載された、
日焼けによる皮膚の害と、
その健康に良い作用であるビタミンD産生との、
バランスについて検証した論文です。

これは皆さんが素朴に疑問を感じることを、
科学的に検証したとても興味深い研究です。

今は真夏で紫外線が非常に強い時期です。

こうした時期にはなるべく紫外線を浴びない方が健康に良い、
というように言われます。
紫外線は皮膚癌の原因となり、
皮膚の免疫力を低下させ、
しみやそばかすの原因にもなります。

こうした観点から言えば、
紫外線など一切浴びない方が良く、
完全にUVカットをした方が良い、
ということになります。

その一方で骨粗鬆症の予防のためには、
なるべくお日様を浴びましょう、
というような健康指導もしばしば行われます。

これはどういう意味かと言うと、
骨の健康を維持するために必須のビタミンであるビタミンDは、
皮膚で紫外線を浴びることにより産生される、
という仕組みがあるからです。

従って、なるべくお日様を浴びた方が、
骨の健康のためには良いということになる訳です。

要するに、
お日様の紫外線は皮膚の健康には害になるけれど、
骨の健康のためには必要なのです。

じゃあ、一体どうすればいいのよ!

と誰でも疑問に思うところです。

この間とある健康番組を見ていたら、
肌の健康のためにはなるべく日焼けしないのがいい、
という話を専門家と称する方がしていて、
ゲストのタレントが、
「でも紫外線は骨のためにはいいんでしょ」
と当然の疑問をぶつけると、
「でも、皮膚のためには日焼けしない方がいいんです」
とあまり答えになっていない受け答えをしていました。

これは実際どう考えるべきなのでしょうか?

紫外線にはその波長によってA波、B波、C波、
という3種類があります。
このうち主に地上に降り注いでいるのは、
波長の長いA波と短いB波の2種類です。
B波の波長が280から315nm、
A波の波長は315から400nmとされています。

このうちA波は真皮にまで達してその深い部分の細胞に障害を与え、
それが皮膚癌のうち主に扁平上皮癌や基底上皮癌の原因となります。

一方でB波はより皮膚の表層に影響を与え、
強い刺激は所謂「日焼け」という火傷の原因となります。
過剰なB波はメラノーマという皮膚癌の原因となります。
そして、ビタミンDの産生は主にこのB波の働きによっています。

このB波は昼間の日差しが強い時には、
ほぼA波と同じくらい吸収されるのですが、
朝や夕のような紫外線の少ない時期には、
比率的にはかなり少なくなっている、
という特徴があります。

ここで主に文献的検証を行ったところ、
皮膚の癌化に結び付くダメージを最小限にして、
ビタミンDの産生を最も活発に行うためには、
正午くらいの日差しが強い時間に、
日焼けをしない程度にお日様を浴び、
それ以外の時間は極力UVカットするというのが、
最もバランス的に健康に良い紫外線の浴び方である、
という結論を上記文献では導き出しています。

面白いですよね。

普通に考えると昼間を避けて、
日差しの弱い時間に活動した方が、
紫外線の害は防げるように思うでしょ。

それが違うのです。
短時間でなるべくB波を主体に浴びて、
A波を浴びないことが最も良いので、
こうした理屈になるのです。
B波を浴びすぎると日焼けになるので、
皮が剥けるような日焼けは避けつつ、
昼間に日差しを浴びるのが正解なのです。

科学は時に常識を裏切るような結果を出すのが、
面白いところですね。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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