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脳梗塞急性期の血糖コントロールについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
脳梗塞時の血糖コントロール.jpg
2019年のJAMA誌に掲載された、
脳梗塞の急性期における血糖コントロールについての論文です。

糖尿病が脳梗塞のリスクを高め、
その予後にも悪い影響を与えることは、
多くの臨床研究において確認された事実です。

ただ、急性の脳梗塞を起こして数日のような急性期に、
血糖コントロールを改善することにより、
その梗塞の予後が改善するかどうかについては、
あまり明確なことが分かっていません。

インスリンを使用して強制的に血糖を低下させるような臨床研究が、
過去に何度か行われていますが、
明確な改善効果は確認されていません。
低血糖は間違いなく脳梗塞の予後を悪化させるので、
それを起こすことなくコントロールを良好に保つことは、
実際には困難で、
結果としてあまり目標まで血糖を下げられていない上に、
糖尿病の患者さんを主体とした試験もあまりないのが実際です。

現行のアメリカのガイドラインでは、
脳梗塞の急性期の血糖値は、
140から180mg/dLに維持することが推奨されていますが、
その根拠はあまり確実なものではありません。
日本のガイドラインに至っては、
ただ、アメリカの推奨値が紹介されているだけで、
独自の指針を示してはいません。

そこで今回の研究では、
アメリカの63か所の専門施設において、
急性の虚血性梗塞を起こして12時間以内であり、
糖尿病があって血糖値が110mg/dLを超えているか、
糖尿病がなくて血糖値が150mg/dL以上である患者、
トータル1151名をクジ引きで2つの群に分けると、
一方はインスリンの持続注入を施行して、
血糖値が80mg/dLから130mg/dLを目標とした厳格なコントロールを行い、
もう一方はインスリンの皮下注射を施行して、
血糖値が80mg/dLから179mg/dLというややラフなコントロールを行って、
その治療を72時間まで持続し、
その後90日間の予後を比較検証しています。

両群ともほぼ8割が糖尿病の患者さんです。

その結果、
後遺症や生命予後などの指標で評価した、
患者さんの予後には両群で有意な差はなく、
重篤な低血糖の発症は、
厳格コントロール群のみで認められました。

このように、
今回のこれまでより厳密な検証においても、
脳梗塞急性期の厳格な血糖コントロールが、
患者さんの短期間の予後を改善するという根拠はなく、
現状のコントロールの指標はアメリカのガイドラインにある、
180mg/dLを超えない程度に維持するという方針が、
概ね妥当であるように思われます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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