新海誠「天気の子」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
「君の名は。」の新海誠監督の、
待望の新作「天気の子」が今ロードショー公開されています。
その初日に足を運びました。
うーん。
映像と音楽は最高です。
特にクライマックスのスカイダイビングみたいなところ、
凄いですよ。
お話は「君の名は。」ほど万人向けではなく、
より監督の趣味が強く出たかな、
という感じもあります。
今回は異常気象の意味づけをテーマにしていて、
それも狙いは良いと思います。
ただ、敢えて説明を避けているところはあると思うのですが、
それを割り引いても、
設定に辻褄が合わないところや、
説明不足のところが多く、
ラストの破滅志向的なところも引っかかりは感じます。
破滅志向が悪いのではなくて、
それに伴う犠牲を一切描写せず、
「何とかなるさ」と美化しているようなところに、
ちょっとモヤモヤする感じがするのです。
それでいて、ラストだけ「君の名は。」と全く同じ、
というのが強引なのです。
以下少しだけ内容に踏み込みます。
鑑賞前の方はご注意下さい。
これ、夜叉ヶ池ですよね。
新海誠版「夜叉ヶ池」。
ただ、普通雨乞いとそのための生け贄というところを、
逆に「晴れ女」として雨の時に晴れを呼ぶ、
という設定にしているのです。
1人の女性を取り戻すために、
村を水没させてしまうというのも「夜叉が池」と一緒です。
ただ、「夜叉が池」では横暴な村の住民、
というものが描かれているので、
「こいつらの村なら水没してしょうがないな」
という気分にさせてくれるのですが、
この作品では小栗旬が声を演じた男が、
やや責任放棄の感じがするものの、
警官も真面目に職務をまっとうしているだけですし、
多分主人公達に害をなしていると思われる家族も、
意図的に全く描かれていないので、
誰も悪くないのに主人公の決断で、
東京が水没してそれでいいの?
という気分にはどうしてもなってしまいます。
勿論ドラマの主人公は身勝手でいいわけですし、
日常にはない決断をすることが、
フィクションの醍醐味でもあるのですが、
この作品の場合、
愛する人を取り戻して東京を水没させるか、
愛する人をあきらめて東京を水没から救うか、
という2択が設定されていて、
監督のコメントなどを読むと、
そのどちらを選ぶかが作品のテーマであるような、
説明の仕方がされています。
しかし、ちょっとそれはフェアでないというか、
水没によって被害に遭う人のことも、
主人公達を孤独に追い込んでいる社会の実態も、
何1つ描写はされていないので、
それでいて主人公の選択だけに意味を持たせるというのは、
かなり無理があるように感じました。
拳銃が出て来て、
そこだけ中村文則の「銃」みたいになるのですが、
それも上手く機能はしていないという気がしました。
超常現象のライターという設定も効果的とは言えないですし、
晴れ女が結局特定の日を晴れにするというバイトでしか使われなかったり、
主人公2人の出会いがあまりにご都合主義であったりと、
何か全体的にディテールが上手く噛み合っていない、
という感じが強くしました。
そんな訳であまり乗れなかったのですが、
非常に意欲的な作品であったことは確かで、
今回はややミスタッチもあったと思うのですが、
新海監督の作品はこれかも期待して待ちたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
「君の名は。」の新海誠監督の、
待望の新作「天気の子」が今ロードショー公開されています。
その初日に足を運びました。
うーん。
映像と音楽は最高です。
特にクライマックスのスカイダイビングみたいなところ、
凄いですよ。
お話は「君の名は。」ほど万人向けではなく、
より監督の趣味が強く出たかな、
という感じもあります。
今回は異常気象の意味づけをテーマにしていて、
それも狙いは良いと思います。
ただ、敢えて説明を避けているところはあると思うのですが、
それを割り引いても、
設定に辻褄が合わないところや、
説明不足のところが多く、
ラストの破滅志向的なところも引っかかりは感じます。
破滅志向が悪いのではなくて、
それに伴う犠牲を一切描写せず、
「何とかなるさ」と美化しているようなところに、
ちょっとモヤモヤする感じがするのです。
それでいて、ラストだけ「君の名は。」と全く同じ、
というのが強引なのです。
以下少しだけ内容に踏み込みます。
鑑賞前の方はご注意下さい。
これ、夜叉ヶ池ですよね。
新海誠版「夜叉ヶ池」。
ただ、普通雨乞いとそのための生け贄というところを、
逆に「晴れ女」として雨の時に晴れを呼ぶ、
という設定にしているのです。
1人の女性を取り戻すために、
村を水没させてしまうというのも「夜叉が池」と一緒です。
ただ、「夜叉が池」では横暴な村の住民、
というものが描かれているので、
「こいつらの村なら水没してしょうがないな」
という気分にさせてくれるのですが、
この作品では小栗旬が声を演じた男が、
やや責任放棄の感じがするものの、
警官も真面目に職務をまっとうしているだけですし、
多分主人公達に害をなしていると思われる家族も、
意図的に全く描かれていないので、
誰も悪くないのに主人公の決断で、
東京が水没してそれでいいの?
という気分にはどうしてもなってしまいます。
勿論ドラマの主人公は身勝手でいいわけですし、
日常にはない決断をすることが、
フィクションの醍醐味でもあるのですが、
この作品の場合、
愛する人を取り戻して東京を水没させるか、
愛する人をあきらめて東京を水没から救うか、
という2択が設定されていて、
監督のコメントなどを読むと、
そのどちらを選ぶかが作品のテーマであるような、
説明の仕方がされています。
しかし、ちょっとそれはフェアでないというか、
水没によって被害に遭う人のことも、
主人公達を孤独に追い込んでいる社会の実態も、
何1つ描写はされていないので、
それでいて主人公の選択だけに意味を持たせるというのは、
かなり無理があるように感じました。
拳銃が出て来て、
そこだけ中村文則の「銃」みたいになるのですが、
それも上手く機能はしていないという気がしました。
超常現象のライターという設定も効果的とは言えないですし、
晴れ女が結局特定の日を晴れにするというバイトでしか使われなかったり、
主人公2人の出会いがあまりにご都合主義であったりと、
何か全体的にディテールが上手く噛み合っていない、
という感じが強くしました。
そんな訳であまり乗れなかったのですが、
非常に意欲的な作品であったことは確かで、
今回はややミスタッチもあったと思うのですが、
新海監督の作品はこれかも期待して待ちたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2019-07-21 09:58
nice!(5)
コメント(0)
コメント 0