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COPDのCRPガイド治療の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COPD急性増悪に対するCRPガイド治療の有効性.jpg
2019年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
COPDに対する抗菌剤治療の適応を、
血液の炎症反応で判断する、
という方法の有効性についての論文です。

近年抗菌剤の乱用による耐性菌の増加などが問題となり、
抗菌剤の使用を必要最小限に制限することが、
世界的に医療のトレンドとなっています。

風邪症状の多くでは抗菌剤は無効で、
その使用は制限される方向にあります。

ただ、病態によってはその初期から、
抗菌剤の使用が有効であると認められていることがあり、
そのうちの1つが慢性閉塞性肺疾患(COPD)の、
急性増悪時の抗菌剤の使用です。

COPDというのは、
主に喫煙習慣を続けることにより生じる、
慢性気管支炎や肺気腫などの肺の変化の総称で、
この病気は普段から痰がらみや息切れなどの症状があり、
それが感染などの要因によって、
急性増悪と呼ばれる急激な症状の悪化を来します。

この急性増悪は細菌感染が引き金となることが多いので、
病気の初期から抗菌剤の使用が、
スタンダードな治療として推奨されているのです。

しかし、全てのCOPDの急性増悪に、
抗菌剤が有効である、という訳ではありません。
入院に至ったCOPDの急性増悪のうち、
2割は感染症以外の要因によるものだった、
という報告もあるからです。

それでは、抗菌剤が有効な急性増悪を、
そうでないものと区別することは出来るのでしょうか?

現行のガイドラインにおいては、
膿性の痰の増加を伴う急性増悪では、
抗菌剤の使用を考慮して良いことになっています。

つまり、症状からの判断で良いのです。
しかし、それは正確でないことも当然ありそうです。

それでは、簡単で臨床現場ですぐに結果が出るような検査で、
細菌感染による急性増悪を見分けることは出来ないでしょうか?

そこで候補として考えられている検査の1つが、
CRPと呼ばれる炎症反応です。

CRPは幅広い炎症で上昇しますから、
上昇しているからと言って、
それが細菌感染であるとは言えません。
ただ、上昇が高度である場合には、
その可能性が高くなります。

そこで今回の研究では、
プライマリケアにおいて、
COPDの急性増悪の患者さんに対し、
通常の治療とCRPを活用した治療との効果を、
抗菌剤の使用頻度の差と、
COPDの予後の差をターゲットにして検証しています。

対象となっているのは、
イギリスのプライマリケアの複数医療機関において、
COPDの急性増悪と診断されたトータル653名の患者さんで、
クジ引きで2つの群に分けると、
一方は通常の医師の判断による治療を行い、
もう一方はCRPを測定してその数値による指針を参考にして、
抗菌剤の使用の可否を決定する治療を行って、
抗菌剤の使用品後とCOPDの予後を比較しています。

CRPの数値は、
それが2mg/dL未満であれが抗菌剤は原則使用せず、
2から4mg/dLの場合は膿性痰の時のみ抗菌剤を考慮し、
4mg/dLを超えるときには抗菌剤を推奨する、
という方法で使用します。

その結果、
通常治療群では77.4%が抗菌剤を使用したのに対して、
CRPガイド治療群では57.0%が抗菌剤を使用しており、
CRPガイド治療は有意に抗菌剤の使用を抑制していました。
一方で登録後4週間の時点でのCOPDの病状は、
CRPガイド治療群の方が僅かながら有意に改善していました。

このように、
CRPを活用した治療戦略により、
COPDの急性増悪時の抗菌剤の不必要な使用は、
減少する効果が期待され、
今回の検証ではそれが患者さんに不利益をもたらす可能性は、
低いと推定されました。

これはまだ今後の検証を待つ必要がありますし、
CRPという数値の評価についても、
専門家により異論のあるところですが、
今後は検査数値など一定の根拠のある時に限って、
抗菌剤の治療は行われる、
という流れは動かないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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