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日本人のアルツハイマー型認知症遺伝子素因 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アルツハイマー型認知症の日本人特有変異.jpg
2019年のMolecular Medicine誌に掲載された、
アルツハイマー型認知症の発症に関わる、
遺伝子変異についての論文です。

老年期の認知症として最も多いアルツハイマー型認知症は、
複数の遺伝子変異などの体質と、
環境要因とが、
合わさって発病すると考えられています。

このうち、
人種によらずどの集団でも、
一定の関与が証明されているのは、
APOE遺伝子のε4という遺伝子多型のみで、
他に30種類以上の単塩基変異が、
関連する遺伝子座として報告されていますが、
人種差などが多く、普遍的なものではないのが実際です。

今回報告されたデータは日本の、
国立長寿医療研究センターなどの研究チームによるもので、
日本人において、APOE遺伝子以外のアルツハイマー型認知症の、
リスク遺伝子座を解析するために、
まずAPOEε4変異を持たないアルツハイマー型老年認知症の患者さん、
トータル202名の遺伝子解析を行い、
7つの遺伝子変異の候補を絞り込みます。
そして、今度はアルツハイマー型老年認知症の4563名と、
コントロールの16459名からなる疫学データを活用して、
絞り込んだ遺伝子変異と認知症発症リスクとの関連を検証しています。

その結果、
SHARPINと呼ばれる遺伝子のある多型により、
それがない人と比較してアルツハイマー型認知症のリスクが、
6.1倍有意に高いことが確認されました。
この変異はこれまでに認知症との関連が報告されているものではなく、
日本人に多いリスク因子として、
今回初めて報告されたものです。

このSHARPIN遺伝子は、
最近注目されている、
シナプス後肥厚部タンパク質と呼ばれるものの1つをコードしていて、
このタンパク質は脳の神経細胞の代謝に、
大きな関連を持っています。
今回培養細胞の実験でこの変異があると、
局所の免疫機能を低下させることが確認されていて、
頻度的には低くはあるものの、
日本人の認知症の発症において、
少なからず影響を与えている可能性があります。

今後の研究の進捗に期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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