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プレガバリン(リリカ)の有害事象について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
リリカの有害事象.jpg
2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
末梢神経に由来する痛みなどの治療薬として、
最近日本でも広く使用されている、
プレガバリン(リリカ)の有害事象についての論文です。

ガバペンチン(ガバペン)は、
比較的新しく創薬された抗痙攣剤ですが、
帯状疱疹の後の神経痛など、
末梢神経が障害されることによる痛みに効果のあることが明らかになり、
てんかんよりもこうした慢性疼痛に対する治療薬として、
その有効性が評価されています。
プレガバリン(リリカ)は、
ガバペンチン由来の化合物で、
疼痛などに対する作用をより強化したとされ、
抗痙攣剤としてではなく、
もっぱら慢性疼痛の治療薬としてその使用がなされています。

日本における保険適応は、
ガバペンはてんかんに限られていますが、
ヨーロッパでは広く末梢神経障害性疼痛に適応が認められています。

プレガバリンは末梢神経障害性疼痛の治療薬として、
日本を含む世界各国で広く使用されています。
またヨーロッパでは全般性不安障害の治療薬として、
アメリカでは線維筋痛症の治療薬として、
適応が認められています。

ガバペンチンの関連薬は、
今世界的にその使用が拡大している薬剤です。

日本においてもそれは同様で、
原因の分からない慢性の痛みに対しては、
整形外科においても内科においても、
かなり気軽に処方されているという印象があります。

しかし、このタイプの薬剤は元々抗痙攣剤で、
眩暈や意識レベルの低下、眠気や認知機能低下など、
多くの有害事象があることも事実です。
2008年にアメリカのFDAは、
抗痙攣剤全般に希死念慮や自殺企図のリスクを、
上昇される可能性があるという警告を出しました。
ただ、ガバペンチンとプレガバリンについては、
データが少ないため明確な結果が得られていません。
この問題はまだグレイであるのです。

今回の研究は国民総背番号制の敷かれているスウェーデンにおいて、
ガバペンチンとプレガバリンが処方された事例191973名のデータを解析し、
自殺企図や過量服薬、外傷などのリスクを検証しています。

これは事例は多いのですが、
同一の患者さんで、処方期間と未処方期間を比較する、
という形で処方のリスクを計算しているので、
その点はやや精度に欠ける可能性はありそうです。

その結果、
ガバペンチンもしくはプレガバリンの使用により、
自殺企図と自殺による死亡を併せたリスクは1.26倍
(95%CI: 1.20 から1.32)、
過量服薬のリスクは1.24倍(95%CI: 1.19から1.28)、
外傷のリスクは1.22倍(95%CI:1.19から1.25)、
自動車事故のリスクは1.13倍(95%CI: 1.06から1.20)、
それぞれ有意に増加していました。

こうしたリスクの増加は、
ガバペンチンよりプレガバリンでより大きく、
また年齢では15歳から24歳という若年の使用で大きく、
55歳以上では有意な増加は見られませんでした。

このように、
プレガバリン(リリカ)の使用により、
若干ながら自殺企図や過量服薬などのリスクの増加があり、
それは若年でより顕著に見られていました。

現状このリスクがどの程度のものであるかは、
明確ではありませんが、
特にプレガバリンを15から24歳の年齢で使用する場合には、
より慎重に必要な事例に限って、
処方を行うべきであるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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