エナジードリンクの心臓への影響

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医活動などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。

2019年のJournal of the American Heart Association誌に掲載された、
エナジードリンクの心臓への影響を、
ボランティアを使って検証した論文です。

エナジードリンクは日本でも、
「元気を付けるために」と飲む人が多く、
高齢者でも食事が摂れない時や風邪の時などに、
結構飲まれる人が多いようです。

アメリカでは青少年を中心に多飲する人が多く、
それが心臓由来の突然死や不整脈の原因ではないか、
という指摘が多くあります。

ただ、仮にそうしたことがあるとして、
その原因は必ずしも明らかではありません。

通常槍玉に挙がるのはカフェインですが、
通常現行売られているエナジードリンクに含まれているカフェイン量は、
1リットルで300ミリグラム程度ですから、
それで心臓にそれほどの悪影響があるのであれば、
コーヒーやお茶でも同じような影響がある筈です。
通常400ミリグラムくらいまでのカフェインでは、
大きな健康上の問題は起こらないと言う点では多くのデータがあり、
その点に整合性がないのです。

そこで今回の研究では、
アメリカで市販されている2種類のエナジードリンクを、
味を似せた飲み物と比較して、
厳密な方法でその急性の心臓への影響を比較しています。

対象は若いボランティア34名で、
市販の2種類のエナジードリンクと偽の飲み物の3種類の飲み物を、
それと分からないように32オンス（ほぼ900ミリリットル）1時間以内に飲み、
1週間毎に3種類を飲んで、
その後4時間の血圧や脈拍、
重症不整脈の発生に関連する、
心電図のQTc間隔などの測定を行います。
エナジードリンクに含まれるカフェイン量は、
トータルで300ミリグラム程度です。

その結果、
エナジードリンクはいずれも偽の飲み物と比較して、
飲用後1時間で収縮期血圧とQTc間隔を延長させました。

つまり、一定の負荷を心臓に掛けることが、
ほぼ確認されたのです。

この影響はこれまでの報告から見て、
トータルで300ミリリットル程度のカフェインの影響とは考えにくく、
カフェインと他の含有物質との相互作用の可能性を含め、
一体何がエナジードリンクの心臓刺激作用の原因となっているのか、
より詳細な検証が必要であると考えられます。

エナジードリンクの害の問題は、
そう単純なものではなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

コメント 3

こんにちは！
先日、林先生の番組を拝見いたしました。
私はコーヒーが大好きで、毎日飲んでます。
先生のご意見で、健康や美容によいとうかがいとてもうれしくなりました！

先生にご相談なのですが、私は健康診断でも貧血と診断されるほど貧血気味で、鉄剤を飲みたくないので食事療法を心がけています。
しかし、ネットでいろいろなところでコーヒーに含まれるタンニンが鉄分の吸収を阻害すると書いてあるのを見ました。
コーヒーは好きですし、せっかく先生が良い成分が入っていることを教えてくださったのに辞めたくはないです。
でも、貧血を改善するためには、コーヒーは控えた方がいいでしょうか？
お忙しいと思いますが、教えていただけたら嬉しいです。
by 茂田麻里 (2019-06-19 14:21) 

茂田さんへ
ご覧頂きありがとうございます。
確かに同時に服用すると鉄分の吸収はやや阻害されますが、
少し時間をおいて飲まれるようにすれば、
問題はないと思います。
by fujiki (2019-06-19 23:02) 

エナジードリンクの多飲による健康被害は私も関心を持っているのですが、先生の書かれた通り、カフェイン量を比べるとコーヒーやお茶と大差なく、なぜエナジードリンクだけでこんな被害が出るのか不思議でした。原因は不明なままですが、カフェイン単独ではないエナジードリンクの複合成分の関与の疑いがあるという点、妙に納得した次第です。

by 植田武智 (2019-06-20 07:17)