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COPDの急性増悪に対する抗菌剤使用の適応について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COPDの抗菌剤使用にCRPを利用する。.jpg
2019年のEuropean Respiratory Journal誌に掲載された、
最近問題になることの多い、
呼吸器疾患に対する抗菌剤の適応についての論文です。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、
喫煙による呼吸器の病気の代表で、
慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれていた病気を総称したものです。

この病気の進行予防としては、
禁煙が勿論必須ですが、
一旦進行した病気は禁煙だけで元に戻る訳ではなく、
それと共に病状の悪化を防ぐ治療が必要です。

その目的のために現行使用されているのが、
吸入の抗コリン剤や気管支拡張剤、吸入ステロイドなどの薬剤です。

COPDの予後において重要な役割を果たしているのが、
急性増悪と呼ばれる症状の急激な悪化です。

この急性増悪のきっかけとしては、
細菌やウイルスによる感染症が大きな役割を果たしています。

COPDの患者さんは平均で年間に1.5回の急性増悪を来たし、
その25%においてウイルスと細菌の混合感染が診断された、
というデータもあります。

もし感染の原因が細菌であれば、
抗菌剤を使用することにより急性増悪時の症状の改善に、
一定の有効性が期待出来ます。
一方でウイルス感染のみであれば、
抗菌剤は有効ではなく、
今問題とされている「抗菌剤の乱用」
ということになってしまいます。

それでは、患者さんの症状や簡単な検査によって、
細菌感染である可能性を診断することが出来るものでしょうか?

現在のCOPDのGOLDと呼ばれるガイドラインにおいては、
患者さんに感染症状があり、
急性増悪時に緑色などの膿のような痰(膿性痰)があれば、
細菌感染の可能性が高いので、
抗菌剤の使用を検討する、とされています。

ただ、ウイルス感染に伴い膿性痰の出ることもありますし、
患者さんが「緑色の汚い痰が出る」と言っても、
それが客観的な膿性痰ではないことも少なくはありません。

そこでもう1つ参考になる可能性があるのは、
血液の白血球の性状やCRPなどの炎症反応です。

今回の臨床研究では、
オランダの2カ所の医療機関において、
COPDの急性増悪で入院となった患者さんをくじ引きで2群に分け、
一方の群の101名は炎症反応のCRPを測定して、
その数値が5mg/dL以上の時のみ細菌感染と判断して抗菌剤を使用し、
他方の群の119名は膿性痰の有無で抗菌剤を使用して、
両群の経過を比較しています。

その結果、
CRPで抗菌剤の使用を判断した群では、
抗菌剤の使用比率は31.7%であったのに対して、
膿性痰での判断では46.2%と有意に高くなっていました。

その一方で治療後30日の時点での改善率や急性増悪の再発率には、
両群で有意な差は認められませんでした。

要するにCRPを指標にして抗菌剤の使用を判断した方が、
抗菌剤の使用は抑制され、
不適切な使用を減らす意味では一定の効果が期待されます。

ただ、予後には特に変化はなく、
平均では両群とも30日程度で次の急性増悪が見られていることから、
治療が奏功している率はそれほど高いものではなく、
予後の更なる改善のために、
より有効な治療の判断が求められるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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