アスピリンは大腸癌検診の感度を上げるのか? [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2019年のJAMA誌に掲載された、
大腸癌検診の感度を上げるために、
検診前にアスピリンを使用する方法の、
効果を検証した論文です。
実際に国際的にその有効性が確認されている癌検診は、
僅かしかありませんが、
そのうちの1つが便の潜血反応を使用した大腸癌検診です。
これは日本の市町村でも広く行われていますが、
便を通常2回日を変えて取ってもらい、
そこに微量の血液の成分が、
検出されるかどうかを検査するものです。
もしこの検査で陽性反応があった場合には、
大腸内視鏡検査など、
大腸癌診断のための精密検査に進みます。
この検査は大腸癌に限って言うと、
その70から80%で陽性となり、
この検査が陰性であれば大腸癌は90%で否定されます。
ただ、大腸癌は前癌状態の腺腫から進行しますが、
その腺腫の段階で検査が陽性となることはあまりありません。
それでは、前癌状態の腺腫において、
この検査の感度を上げるような方法はないのでしょうか?
報告によると、
低用量のアスピリンを長期使用している患者さんでは、
未使用の患者さんより前癌状態の腺腫の発見率が高かった、
というデータが存在しています。
これはアスピリンの使用により出血が止まりにくい状態となるので、
腺腫からの微量な出血が、
それだけ感知されやすくなった可能性が想定されています。
それでは、
アスピリンを普段使用していない人でも、
便潜血の検査の前にアスピリンを使用することで、
検査の感度を上げることが出来るのではないでしょうか?
今回の研究ではその点を検証する目的で、
検査前にアスピリンを単回使用して、
その効果を比較検証しています。
ドイツの複数施設において、
40歳から80歳のアスピリンなどの抗血小板剤や抗凝固剤を未使用で、
大腸の内視鏡検査を予定している2422名を登録し、
対象者にも検査の担当者にも分からないように2つの群に分けると、
一方は便潜血の採便の2日前に300ミリグラムのアスピリンを使用し、
もう一方は偽薬を使用して便潜血検査を施行し、
その結果をその後の大腸内視鏡検査の結果と比較して、
アスピリン使用の有効性を検証しています。
その結果、
前癌病変の腺腫と癌を併せた病変の検出感度は、
偽薬群では30.4%にあったのに対して、
アスピリン群では40.2%で、
一定の感度の上昇が認められました。
しかし、予め設定した有効と判断される水準には、
達していませんでした。
従って、今回の結果としては、
アスピリンの使用は当初想定したような効果が得られなかった、
要するに失敗であったということになります。
ただし…
これはより例数を増やせば、
有意な差に達するという可能性はあります。
また、デザインとして1回のみのアスピリンの使用を行なっていますが、
それでは充分な効果に至らないという可能性もあります。
たとえば1週間くらい持続して使用すれば、
より効果は明確になった可能性はあります。
従って、まだこの問題は結論が出ているとは言えません。
今後の更なる検証を期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2019年のJAMA誌に掲載された、
大腸癌検診の感度を上げるために、
検診前にアスピリンを使用する方法の、
効果を検証した論文です。
実際に国際的にその有効性が確認されている癌検診は、
僅かしかありませんが、
そのうちの1つが便の潜血反応を使用した大腸癌検診です。
これは日本の市町村でも広く行われていますが、
便を通常2回日を変えて取ってもらい、
そこに微量の血液の成分が、
検出されるかどうかを検査するものです。
もしこの検査で陽性反応があった場合には、
大腸内視鏡検査など、
大腸癌診断のための精密検査に進みます。
この検査は大腸癌に限って言うと、
その70から80%で陽性となり、
この検査が陰性であれば大腸癌は90%で否定されます。
ただ、大腸癌は前癌状態の腺腫から進行しますが、
その腺腫の段階で検査が陽性となることはあまりありません。
それでは、前癌状態の腺腫において、
この検査の感度を上げるような方法はないのでしょうか?
報告によると、
低用量のアスピリンを長期使用している患者さんでは、
未使用の患者さんより前癌状態の腺腫の発見率が高かった、
というデータが存在しています。
これはアスピリンの使用により出血が止まりにくい状態となるので、
腺腫からの微量な出血が、
それだけ感知されやすくなった可能性が想定されています。
それでは、
アスピリンを普段使用していない人でも、
便潜血の検査の前にアスピリンを使用することで、
検査の感度を上げることが出来るのではないでしょうか?
今回の研究ではその点を検証する目的で、
検査前にアスピリンを単回使用して、
その効果を比較検証しています。
ドイツの複数施設において、
40歳から80歳のアスピリンなどの抗血小板剤や抗凝固剤を未使用で、
大腸の内視鏡検査を予定している2422名を登録し、
対象者にも検査の担当者にも分からないように2つの群に分けると、
一方は便潜血の採便の2日前に300ミリグラムのアスピリンを使用し、
もう一方は偽薬を使用して便潜血検査を施行し、
その結果をその後の大腸内視鏡検査の結果と比較して、
アスピリン使用の有効性を検証しています。
その結果、
前癌病変の腺腫と癌を併せた病変の検出感度は、
偽薬群では30.4%にあったのに対して、
アスピリン群では40.2%で、
一定の感度の上昇が認められました。
しかし、予め設定した有効と判断される水準には、
達していませんでした。
従って、今回の結果としては、
アスピリンの使用は当初想定したような効果が得られなかった、
要するに失敗であったということになります。
ただし…
これはより例数を増やせば、
有意な差に達するという可能性はあります。
また、デザインとして1回のみのアスピリンの使用を行なっていますが、
それでは充分な効果に至らないという可能性もあります。
たとえば1週間くらい持続して使用すれば、
より効果は明確になった可能性はあります。
従って、まだこの問題は結論が出ているとは言えません。
今後の更なる検証を期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2019-05-17 06:21
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