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日焼け止めの成分の血液への移行について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
日焼け止めのリスク.jpg
2019年のJAMA誌に掲載された、
日焼け止めの4種類の成分の皮膚からの吸収を検証した論文です。

内容は24名のボランティアで短期間の測定をしたもので、
アメリカのFDAが安全性のチェックのために行なったものです。
論文ではなく、短報という扱いです。

紫外線は皮膚を傷めてシミやそばかすなどの原因となり、
一部の皮膚癌のリスクを増加させます。

このため、以前は日焼けというのは健康のシンボルでしたが、
今では忌み嫌われるようになり、
紫外線の強い時期には日焼け止めが必須、
というのが世界的なトレンドになっています。

最近では多くの化粧品が日焼け止めの成分を含有していて、
その美肌効果が謳われているので、
ほぼ毎日日焼け止めの成分が使用されている、
といっても過言ではない状況が生じています。

その使用は生後6か月から、
場合によっては行われています。

日焼け止めには数多くの成分が含有されています。

古いタイプの日焼け止めは、
紫外線を反射する性質を持つ、
酸化チタンと酸化亜鉛が使用されていて、
こうしたタイプの化合物については、
通常の使用における安全性はほぼ確立しています。

その一方で最近の日焼け止めの主力となっているのは、
紫外線吸収剤と呼ばれるタイプの有機系科学物質で、
今では数十種類が混合され使用されています。

ただ、その安全性についてはまだ明確ではなく、
国や地域によってもその規制は様々です。

アメリカのFDAはこうした紫外線吸収剤について、
皮膚から吸収された際の血液濃度が、
0.5ng/mLを超えないことをその使用の条件としています。

これはその作用が特定出来ない化学物質において、
発癌性のリスクを一定レベル以下にすることを目標に、
算出されている指標です。

仮に発癌性の強い物質であっても、
この濃度以下であればその影響はほぼ許容範囲となる、
という意味です。

今回の検証は日焼け止めの成分の安全性を、
この指標を満たしているかどうかで検証したものです。

24名の健康なボランティアを4つの群に分け、
4種類の日焼け止め(2種類はスプレーで、残りはクリームとローション)を、
毎日4回4日間、身体の4分の3に使用し、
代表的な紫外線吸収剤の成分である、
アボベンゾン、オキシベンゾン、オクトクリレン、エカムスルの血液濃度を、
頻回に測定しています。

その結果、
外用1日目において、
4種類の外用剤の全てにおいて、
その4種類の成分全ての血液濃度は、
基準とされる0.5ng/mLを上回っていました。
オキシベンゼンに至っては、
使用期間を含む7日間の平均血液濃度が、
169.3から209.6ng/mLという高濃度となっていました。

このオキシベンゼンは、
母乳にも含まれていたという報告もあり、
生まれてから死ぬまで、
人によっては常にこの物質の曝露を受けている、
と言っても過言ではありません。

現状こうした紫外線吸収剤の成分が、
人間において明らかな毒性や健康影響を持つ、
という根拠は得られていませんが、
今後そうした検証も積み上げられていくと思われます。

現時点ではこうした日焼け止めの頻用に、
リスクはないとは言い切れず、
その使用は紫外線のリスクの高い状況に、
限って使用することが安全ではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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