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トム・ストッパード「良い子はみんなご褒美がもらえる」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
良い子はみんなご褒美.jpg
イギリス演劇界の巨匠トム・ストッパードが、
1970年代に執筆し、
アンドレ・プレヴィンが作曲した、
オーケストラと役者の芝居が競演するという異色作が、
今イギリスの演出家の演出で本邦初演されています。

これはソ連を舞台に、
精神病院に幽閉された政治犯の男と、
同じく入院していて、
自分がオーケストラを指揮していると信じている男が、
途中で入れ替わることによって自由の身になる、
という皮肉で奇妙な作品です。

1時間15分ほどの短い芝居ですが、
舞台奥には本物のオーケストラが陣取っていて、
音楽を演奏しながらその前で芝居が行われる、
という面白い趣向です。

ある男の妄想の中にしか登場しないオーケストラを、
舞台上に実際に登場させ、
それが常にお話の中央に存在している、
という訳で、
明らかに新時代のオペラを目指しているのです。

ただ、発想は面白くても、
実際に上演するのはかなりハードルの高い作品です。

基本的には登場人物の少ない地味な作品なので、
小劇場で上演するのが妥当な感じがするのに、
その一方でオーケストラを舞台に上げないといけないので、
大きな舞台が必要となります。
作品の背景となっているのは1970年代のソ連ですから、
それを今の日本の観客に見せて、
作者の意図を感じさせようというのも、
かなり無理のある試みです。

今回の上演は海外の演出家の手によるもので、
かなり真面目に作品世界を表現しようとしたものですが、
良質な上演ではあったものの、
結果として娯楽性のある芝居にはなっていませんでした。

アンサンブルのダンスが矢鱈とフィーチャーされていて、
如何にも欧米の演出家という感じですが、
個人的には説明過剰で退屈に感じました。
ラストに2人の主人公が入れ替わって釈放されるのは、
一種のギャグだと思うのですが、
その面白さは活かされていたとは思えません。

これは本当はケラさん辺りが演出した方が、
日本の観客の心には響く作品となってように感じました。

演技陣で特筆するべきは、
オーケストラの妄想を生きる青年を演じた橋本良亮さんで、
やや滑舌に難がありましたが、
この難しい役柄を、
説得力と熱量を持って演じていたと思います。

そんな訳で良質な舞台ではありましたが、
面白い芝居とは言い難く、
多分もう再演されることもないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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