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コプリック斑の診断能はどのくらいか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コプリック斑の診断能.jpg
2019年のFrontiers in Microbiology誌に掲載された、
麻疹(はしか)の初期診断において、
重要な所見とされている「コプリック斑」が、
実は他のウイルス感染症でもしばしば見られる所見であった、
という日本発の知見です。

麻疹はウイルス感染症の中でも、
感染力が強く重症化することも多い病気です。
そのためワクチン接種が予防のために行われていますが、
様々な事情があって年齢層によりワクチンの接種率には大きな差があり、
散発的な流行を招いていることは、
皆さんもご存じの通りです。

麻疹はまず発熱や鼻水、咳といった、
通常の風邪と変わりのない症状で始まり、
一旦熱が下がってから、
全身に皮疹が出現して再度の発熱に至るのが特徴的な経過です。

そのため、特徴的な湿疹が出現しないと、
診断が付かないことが多いのです。

初期には高熱のため、
インフルエンザなどが疑われることもあります。

それでは、皮疹出現の前に、
麻疹を疑うような兆候はないのでしょうか?

この点において昔から有名なのが、
コプリック斑です。

コプリック斑というのは、
1896年にアメリカの医師であるコプリックにより初めて報告された、
麻疹の初期の所見の1つで、
皮疹出現より数日前に見られる、
口の頬の辺りの粘膜の、
発赤を周囲に伴う白い盛り上がりです。

この所見は麻疹のみで見られるものとされ、
病初期に麻疹の存在を疑うと言う意味で、
臨床的に非常に重要な所見とされています。

ただ、他のウイルス疾患での発生の報告もあり、
実際に麻疹の事例においてどのくらいの比率で、
コプリック斑が生じるのかというデータも、
信頼のおけるものはあまり存在していません。

今回の報告は横浜市立大学や国立感染症研究所などの共同研究ですが、
麻疹もしくはその疑いとして報告された事例、
トータル3023例を解析して、
その原因ウイルスとコプリック斑との関連を検証しています。

その結果、麻疹疑いの3023例中、
遺伝子検査で麻疹ウイルスが検出されたのは421例で、
風疹ウイルスが検出されたのは599例でした。
つまり、臨床的に麻疹が疑われる事例の中でも、
実際には風疹が多かったのです。
一方でコプリック斑は全体の24%に当たる717件で検出されています。
つまり、コプリック斑が認められた事例の中でも、
麻疹以外の病気のケースが多かったのです。

麻疹の事例におけるコプリック斑の陽性率は28.2%で、
風疹における陽性率はそれに次いで17.4%でした。

このように、
確かにコプリック斑は麻疹で見られやすい所見ではあるのですが、
風疹でも少なからず認められるなど、
それほど麻疹に特異的な所見ではなく、
その麻疹における出現率は、
今回の検証では3割弱という程度でした。

今回のデータは、
単純に各医療機関からの報告をまとめたものなので、
コプリック斑の診断能は報告者により様々で、
統一されたものとは言えないので、
そのバイアスがかなりあると思われます。

今度どのような臨床所見が、
最も麻疹の診断に有効であるのか、
より包括的な検証を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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