変形性関節症に対するトラマドール使用の生命予後への影響 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので外来は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2019年のJAMA誌に掲載された、
最近整形外科などで頻用されている痛み止めの、
生命予後への影響についての論文です。
腰痛や膝などの関節炎の痛み止めとして、
最近使用されることが多いのが、
オピオイド系鎮痛薬のトラマドールです。
単独の製剤がトラマールとして、
消炎鎮痛剤のアセトアミノフェンとの合剤が、
トラムセットという商品名で日本では使用されています。
トラマドールは麻薬のモルヒネと同じ、
オピオイド受容体に弱く結合する薬で、
モルヒネより副作用が少ないために、
癌性疼痛以外にも難治性の痛みに対して、
幅広く使用されています。
現行の国内外のガイドラインにおいても、
慢性疼痛の治療の第一選択は非ステロイド系消炎鎮痛剤ですが、
それで痛みのコントロールが困難な場合には、
次に推奨されているのはトラマドールなどのオピオイド系鎮痛剤です。
しかし、
非ステロイド系消炎鎮痛剤と比較して、
トラマドールの使用が生命予後に与える影響に、
どのような違いがあるのかについては、
あまり明確なことが分かっていません。
そこで今回の研究では、
イギリスのプライマリケアの医療データを活用して、
50歳以上で変形性関節症と診断された患者さんに対して、
非ステロイド系消炎鎮痛剤が使用された場合と、
麻薬のコデインが使用された場合、
そしてトラマドールが使用された場合との、
1年間の生命予後を比較検証しています。
トータルで88902名の患者さんが登録され、
その内訳はトラマドール使用者が44451名、
非ステロイド系消炎鎮痛剤のナプロキセン使用者が12397名、
ジクロフェナク使用者が6512名、
セレコキシブ使用者が5674名、
エトリコキシブ使用者が2946名、
麻薬のコデイン使用者が16922名となっています。
観察期間中のトラマドール使用者の総死亡のリスクは、
ジクロフェナクと比較して1.88倍(95%CI: 1.51から2.35)、
ナプロキセンと比較して1.71倍(95%CI: 1.41 から2.07)、
セレコキシブと比較して1.70倍(95%CI: 1.33から2.17)、
アトリコキシブと比較して2.04倍(95%CI:1.37から3.03)、
それぞれ有意に増加していました。
一方でコデインとの比較においては、
総死亡に有意な差は認められませんでした。
この結果は1年という短期間のもので、
非ステロイド系消炎鎮痛剤が使用されるよりも、
より重症度の高い疼痛に対して、
コデインやトラマドールが使用されることが多いと考えると、
その基礎疾患が予後に影響をしているという可能性も否定は出来ません。
従って、
この結果のみをもってトラマドールの予後が、
非ステロイド系消炎鎮痛剤より悪いとは言い切れません。
ただ、その可能性が示されたことは事実で、
今後の知見の積み重ねを注視したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので外来は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2019年のJAMA誌に掲載された、
最近整形外科などで頻用されている痛み止めの、
生命予後への影響についての論文です。
腰痛や膝などの関節炎の痛み止めとして、
最近使用されることが多いのが、
オピオイド系鎮痛薬のトラマドールです。
単独の製剤がトラマールとして、
消炎鎮痛剤のアセトアミノフェンとの合剤が、
トラムセットという商品名で日本では使用されています。
トラマドールは麻薬のモルヒネと同じ、
オピオイド受容体に弱く結合する薬で、
モルヒネより副作用が少ないために、
癌性疼痛以外にも難治性の痛みに対して、
幅広く使用されています。
現行の国内外のガイドラインにおいても、
慢性疼痛の治療の第一選択は非ステロイド系消炎鎮痛剤ですが、
それで痛みのコントロールが困難な場合には、
次に推奨されているのはトラマドールなどのオピオイド系鎮痛剤です。
しかし、
非ステロイド系消炎鎮痛剤と比較して、
トラマドールの使用が生命予後に与える影響に、
どのような違いがあるのかについては、
あまり明確なことが分かっていません。
そこで今回の研究では、
イギリスのプライマリケアの医療データを活用して、
50歳以上で変形性関節症と診断された患者さんに対して、
非ステロイド系消炎鎮痛剤が使用された場合と、
麻薬のコデインが使用された場合、
そしてトラマドールが使用された場合との、
1年間の生命予後を比較検証しています。
トータルで88902名の患者さんが登録され、
その内訳はトラマドール使用者が44451名、
非ステロイド系消炎鎮痛剤のナプロキセン使用者が12397名、
ジクロフェナク使用者が6512名、
セレコキシブ使用者が5674名、
エトリコキシブ使用者が2946名、
麻薬のコデイン使用者が16922名となっています。
観察期間中のトラマドール使用者の総死亡のリスクは、
ジクロフェナクと比較して1.88倍(95%CI: 1.51から2.35)、
ナプロキセンと比較して1.71倍(95%CI: 1.41 から2.07)、
セレコキシブと比較して1.70倍(95%CI: 1.33から2.17)、
アトリコキシブと比較して2.04倍(95%CI:1.37から3.03)、
それぞれ有意に増加していました。
一方でコデインとの比較においては、
総死亡に有意な差は認められませんでした。
この結果は1年という短期間のもので、
非ステロイド系消炎鎮痛剤が使用されるよりも、
より重症度の高い疼痛に対して、
コデインやトラマドールが使用されることが多いと考えると、
その基礎疾患が予後に影響をしているという可能性も否定は出来ません。
従って、
この結果のみをもってトラマドールの予後が、
非ステロイド系消炎鎮痛剤より悪いとは言い切れません。
ただ、その可能性が示されたことは事実で、
今後の知見の積み重ねを注視したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2019-04-03 05:59
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