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卵とコレステロールの摂取量と心血管疾患リスク(2019年の新知見) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コレステロールの摂取量と心血管疾患リスク.jpg
2019年のJAMA誌に掲載された、
コレステロールや卵の摂取量と動脈硬化の病気との、
関連についての論文です。

コレステロールや卵と健康との関連については、
色々な見方があります。

卵黄には1個に200ミリグラムを超えるコレステロールが含まれています。

血液のコレステロールが高いと、
動脈硬化が進行しやすいという知見が得られてから、
食事のコレステロールを制限しようという動きが、
世界的に高まり、
そこで提唱された基準が、
食事のコレステロールを1日300ミリグラム以下にする、
というものです。

これを達成するためには、
卵をなるべく食べないことが、
必要不可欠ですから、
卵の制限が、
健康のためには必要であると考えられたのです。

ところが

2016年に公表されたアメリカのガイドラインにおいては、
食事のコレステロールを制限しても、
血液のコレステロールを減らせるという根拠は乏しいとして、
その目標値は削除されました。

これは、
「コレステロールの食事制限は不要」として、
一般にも報道されました。
その報道には誤解を招く点があり、
実際には数値目標が外れただけで、
コレステロールの制限自体は推奨されていたのですが、
コレステロールに制限は要らない、
という誤ったメッセージに受け取られたことは、
残念でした。

ポイントは血液のコレステロール濃度を指標とした時、
食事のコレステロールを制限したり卵を制限しても、
明確なコレステロールの降下作用は確認出来ない、
ということです。

従って、コレステロールの摂取が多いと、
それだけ心血管疾患のリスクが高まるかどうかは、
疫学データにおいても相反する結果があり、
明確にどちらと言い切れる事項ではないのです。

今回の研究はアメリカの6つの大規模疫学データを、
まとめて解析したもので、
29615名の一般住民を中央値で17.5年の経過観察を行っています。

その結果、
コレステロール以外の心血管疾患のリスク因子を補正して解析したところ、
1日に300ミリグラムのコレステロールを余計に摂ることにより、
心血管疾患のリスクは17%(95%CI:1.09から1.26)、
総死亡のリスクは18%(95%CI: 1.10から1.26)、
それぞれ有意に増加していました。
ここにおける心血管疾患とは虚血性心疾患と脳卒中、心不全、
そしてそれ以外を含む心血管疾患による死亡を併せたものです。

また、卵を1日半個余計に摂ることにより、
心血管疾患のリスクは6%(95%CI: 1.03から1.10)、
総死亡のリスクは8%(95%CI: 1.04から1.11)、
こちらも有意に増加していました。

この卵による心血管疾患リスクの増加は、
コレステロールの摂取量で補正すると有意ではなくなることから、
卵によるリスク増加は、
含まれるコレステロール量によるものと想定されました。

このように今回の大規模な検証においては、
コレステロールや卵の摂取量が多いと、
それが明確に血中コレステロールの増加に反映はされなくても、
心血管疾患のリスクの増加や生命予後の悪化に影響する可能性が高く、
心血管疾患の予防のためには、
一定の食事のコレステロール制限は、
必要と考えておいた方が良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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