マスネ「ウェルテル」(2019年新国立劇場レパートリー) [オペラ]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
新国立劇場のレパートリーとして上演された、
マスネの「ウェルテル」を聴いて来ました。
これはゲーテの「若きウェルテルの悩み」を原作として、
マスネが作曲したフランスオペラの代表的な作品の1つで、
マスネの作品としても「マノン」に次いで上演頻度の高いものだと思います。
ともかくテノールが歌いっぱなしという感じの作品で、
テノールが良くないと話にならないオペラです。
僕はこれまでに生では2回聴いていて、
最初は2002年に新国立劇場が初めて上演した時。
テノールはジョゼッペ・サバティーニでした。
歌唱は素晴らしかったのですが、
年上の女性に失恋して自殺する青年、
という役柄には違和感はありました。
2回目はリヨン歌劇場が演奏会形式で上演し、
大野和士さんが指揮した舞台でしたが、
これは若手のテノールが確か代役だったと思うのですが、
とてもウェルテルを歌う水準には達しておらず、
学生の練習に立ち会っているような悲惨な舞台でした。
大野さんの指揮するオペラは、
これまで何故か歌手との連携の悪い、
ギクシャクしたものが多いという印象があります。
何故なのかしら?
ひょっとしたら、
たまたまそうした舞台ばかりを聴いているのかも知れません。
今回の演出は2016年が初演ですが、
その時は聴いていません。
演出はクラシックなものですが、
細部に安普請の感じはあるものの、
なかなか美しくて好印象でした。
さて、今回は主役のテノール以外は日本人というキャスト、
ただし相手役のシャルロットは、
ヨーロッパで活躍されている藤村実穂子さんです。
テノール役はサイミール・ピルグという若手で、
ハンサムでビジュアルも役柄にどんぴしゃりですし、
声も伸びがあって声量と繊細さを兼ね備えた、
なかなかの逸材でした。
対する藤村さんはビジュアル的には微妙ですが、
歌は非常に素晴らしくかつ堂々としていて、
世界の第一線で活躍している凄みが感じられました。
ただ、彼女の歌い方はワーグナーのヒロインのようなので、
あまりに堂々としていて、
この作品の持つある種軟弱な優しさのようなものが、
陰に隠れてしまった感はありました。
テノールは藤村さんほどではないのですが、
矢張りかなり堂々とした歌いっぷりなので、
マスネの繊細さが、あまり表現されず、
「なんでこんなウジウジした話なのに、
そんなに堂々と歌い上げちゃってるの?」
という違和感が伴うような印象がありました。
本当のマスネは多分、
もっと繊細で弱々しくないと、
物語の切実さに届かないのではないでしょうか?
そんな訳でこれまで聴いた「ウェルテル」の舞台の中では、
最もクオリティの高い素敵で音楽的に優れた舞台でしたが、
その表現自体にはマスネの繊細さはあまりなかったようにも感じました。
音は素敵で情感に溢れていて、
何も起こらない1幕が、
個人的には一番気に入りました。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
新国立劇場のレパートリーとして上演された、
マスネの「ウェルテル」を聴いて来ました。
これはゲーテの「若きウェルテルの悩み」を原作として、
マスネが作曲したフランスオペラの代表的な作品の1つで、
マスネの作品としても「マノン」に次いで上演頻度の高いものだと思います。
ともかくテノールが歌いっぱなしという感じの作品で、
テノールが良くないと話にならないオペラです。
僕はこれまでに生では2回聴いていて、
最初は2002年に新国立劇場が初めて上演した時。
テノールはジョゼッペ・サバティーニでした。
歌唱は素晴らしかったのですが、
年上の女性に失恋して自殺する青年、
という役柄には違和感はありました。
2回目はリヨン歌劇場が演奏会形式で上演し、
大野和士さんが指揮した舞台でしたが、
これは若手のテノールが確か代役だったと思うのですが、
とてもウェルテルを歌う水準には達しておらず、
学生の練習に立ち会っているような悲惨な舞台でした。
大野さんの指揮するオペラは、
これまで何故か歌手との連携の悪い、
ギクシャクしたものが多いという印象があります。
何故なのかしら?
ひょっとしたら、
たまたまそうした舞台ばかりを聴いているのかも知れません。
今回の演出は2016年が初演ですが、
その時は聴いていません。
演出はクラシックなものですが、
細部に安普請の感じはあるものの、
なかなか美しくて好印象でした。
さて、今回は主役のテノール以外は日本人というキャスト、
ただし相手役のシャルロットは、
ヨーロッパで活躍されている藤村実穂子さんです。
テノール役はサイミール・ピルグという若手で、
ハンサムでビジュアルも役柄にどんぴしゃりですし、
声も伸びがあって声量と繊細さを兼ね備えた、
なかなかの逸材でした。
対する藤村さんはビジュアル的には微妙ですが、
歌は非常に素晴らしくかつ堂々としていて、
世界の第一線で活躍している凄みが感じられました。
ただ、彼女の歌い方はワーグナーのヒロインのようなので、
あまりに堂々としていて、
この作品の持つある種軟弱な優しさのようなものが、
陰に隠れてしまった感はありました。
テノールは藤村さんほどではないのですが、
矢張りかなり堂々とした歌いっぷりなので、
マスネの繊細さが、あまり表現されず、
「なんでこんなウジウジした話なのに、
そんなに堂々と歌い上げちゃってるの?」
という違和感が伴うような印象がありました。
本当のマスネは多分、
もっと繊細で弱々しくないと、
物語の切実さに届かないのではないでしょうか?
そんな訳でこれまで聴いた「ウェルテル」の舞台の中では、
最もクオリティの高い素敵で音楽的に優れた舞台でしたが、
その表現自体にはマスネの繊細さはあまりなかったようにも感じました。
音は素敵で情感に溢れていて、
何も起こらない1幕が、
個人的には一番気に入りました。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2019-03-24 08:49
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