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シュウ酸の排泄量と腎機能低下との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
シュウ酸の排泄量と腎機能.jpg
2019年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
シュウ酸の尿中排泄量が腎機能低下に与える影響についての論文です。

シュウ酸は葉物の野菜などに多く含まれる、
シンプルな構造の酸で、
身体では代謝の過程で生じることがありますが、
基本的には身体で利用出来る物質ではなく、
そのまま尿や便から排泄されます。

カルシウムと結合し易い性質があり、
そのためカルシウムを多く含む食品と一緒に摂ると、
結合して便に排泄されやすくなります。
また、尿中でもカルシウムと結合して結石の原因となります。

大量のシュウ酸は毒性がありますが、
通常食事で摂取されるレベルのシュウ酸は、
尿路結石を繰り返すような場合以外は、
特に問題視はされていません。
ただ、シュウ酸結石の沈着が急性の腎障害の原因となったり、
基礎研究においては組織の炎症や障害を誘発するという知見もあるので、
食事で摂るレベルのシュウ酸であっても、
腎機能の低下を招く可能性は否定出来ません。

今回の研究では軽度の腎機能障害の患者さんにおいて、
尿中のシュウ酸の排泄量と、
腎機能低下との間に関連があるのかを検証しています。

対象となっているのは、
慢性の腎障害の別個の疫学研究に参加している、
慢性腎障害のステージ2から4の3123名で、
尿中のシュウ酸の排泄量を5分割して検討したところ、
排泄量が多いほど、
推算糸球体濾過量が50%低下するリスクも、
末期腎不全に移行するリスクも、
いずれも有意に増加が認められました。

尿中シュウ酸排泄量が低い方から4割と比較して、
高い方から6割であると、
その後推算糸球体濾過量が50%低下するリスクは1.32倍(95%CI: 1.13から1.53)、
末期腎不全に移行するリスクは1.37倍(95%CI: 1.15から1.63)、
それぞれ有意に増加していました。

要するに少し腎機能が低下したような状態では、
通常食事で摂取してもあり得る程度のシュウ酸の尿への排泄増加が、
腎機能低下を進行させるリスクになっているかも知れない、
という結果です。

シュウ酸を多く含む食品は、
ほうれん草、緑茶、コーヒー、ココア、ナッツ、
バナナなど、
通常では健康に良いとされる食品が並んでいますから、
それを制限するというのも悩ましいところですが、
腎機能がある程度低下した状態では、
シュウ酸の摂り過ぎには留意して間違いはないと思いますし、
今後シュウ酸を制限することで、
本当に腎機能低下の進行予防効果があるのかを含めて、
より進んだ検証が必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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