岩井秀人「世界は一人」 [演劇]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ハイバイの岩井秀人さんが作・演出に当り、
前野健太さんの音楽に、松尾スズキさん、松たか子さん、
瑛太さんという、魅力的なキャストが顔を揃えた、
音楽劇が今上演されています。
これは演出は結構ドライな感じで、
トータルなイメージは、
マームとジプシーに近いような雰囲気でした。
鉄骨の骨組みだけみたいな抽象的なセットで、
最初に8歳の林間学校の夜で、
主役の3人の同級生がおねしょを巡る「事件」を起こして、
それが何度も劇中でリフレインされ、
最後もそこに回帰してゆきます。
オープニングがなかなか面白くて、
まず音楽が鳴って前野さんが狂言回し的に歌い出すと、
松尾スズキさんがそこに演技を合わせていって、
音楽が鳴り続けながら、
ボーカルのない合間に、
今度は松尾さんが台詞を合わせていって、
音楽と役者の芝居が、
不思議に混じり合うようにして、
次第にある種の高揚感が生まれて行きます。
この辺の音楽と演技の関係も、
マームとジプシーに近い感じです。
ただ、物語は岩井さんですからもっとウェットで、
ドロドロもしてリアルな感じですし、
音楽自体もアングラの劇中劇に近いような、
懐かしくもウェットな感じなので、
個人的にはとても心地良く聴くことが出来ます。
特にオープニングの「汚泥」の歌や、
何度か歌われる「また巡りあった」というような趣旨のラブソングは、
情緒的な水分が心地良く素敵でした。
ただ、お話自体はやや平板で盛り上がりには欠けました。
舞台が北九州のかつての炭鉱町で、
そこから一旦東京に移り、
後半はまた北九州に回帰する、
という筋立てになっているのですが、
セットも抽象的で変化がありませんし、
キャストも少人数である上に、
台本に情景描写的なものが殆ど書き込まれていないので、
その時間や場の変化が全く分からないというのが、
あまりお話が盛り上がらなかった、
大きな原因であったように感じました。
松たか子さんの役柄が一旦自殺未遂で死にかけたり、
瑛太さんの役柄が一旦引きこもりになったりして、
舞台上から消えてまた再登場するのですが、
その間にもナレーションで登場したり、
別の役柄を演じたりもするので、
そこも混乱の一因のように感じました。
松尾さんと松さんが東京で再会する場面など、
曲も良くてとても素敵なのに、
あまり観客の心に響かないのも、
その辺りに原因があったのではないでしょうか。
松たか子さんは最近の映画での吹っ切れたような芝居が素晴らしくて、
第二の黄金時代ではないかしら、
と密かに思っていて、
今回の芝居でもその歌声や表情など素晴らしかったのですが、
今回の役柄が松さんの本領発揮のものであったかと言うと、
いささか疑問で、
もっと舞台ならではの演技表現が、
観たかったのが本音です。
現在を代表する個性的な演技派が、
3人顔を揃えたと言って良い芝居なのですから、
もう少し演技の魅力に奉仕するような、
劇作であるべきではなかったでしょうか。
そんな訳でとても心地の良い観劇ではあったのですが、
正直物語世界にはかなり物足りなさを感じたお芝居でした。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ハイバイの岩井秀人さんが作・演出に当り、
前野健太さんの音楽に、松尾スズキさん、松たか子さん、
瑛太さんという、魅力的なキャストが顔を揃えた、
音楽劇が今上演されています。
これは演出は結構ドライな感じで、
トータルなイメージは、
マームとジプシーに近いような雰囲気でした。
鉄骨の骨組みだけみたいな抽象的なセットで、
最初に8歳の林間学校の夜で、
主役の3人の同級生がおねしょを巡る「事件」を起こして、
それが何度も劇中でリフレインされ、
最後もそこに回帰してゆきます。
オープニングがなかなか面白くて、
まず音楽が鳴って前野さんが狂言回し的に歌い出すと、
松尾スズキさんがそこに演技を合わせていって、
音楽が鳴り続けながら、
ボーカルのない合間に、
今度は松尾さんが台詞を合わせていって、
音楽と役者の芝居が、
不思議に混じり合うようにして、
次第にある種の高揚感が生まれて行きます。
この辺の音楽と演技の関係も、
マームとジプシーに近い感じです。
ただ、物語は岩井さんですからもっとウェットで、
ドロドロもしてリアルな感じですし、
音楽自体もアングラの劇中劇に近いような、
懐かしくもウェットな感じなので、
個人的にはとても心地良く聴くことが出来ます。
特にオープニングの「汚泥」の歌や、
何度か歌われる「また巡りあった」というような趣旨のラブソングは、
情緒的な水分が心地良く素敵でした。
ただ、お話自体はやや平板で盛り上がりには欠けました。
舞台が北九州のかつての炭鉱町で、
そこから一旦東京に移り、
後半はまた北九州に回帰する、
という筋立てになっているのですが、
セットも抽象的で変化がありませんし、
キャストも少人数である上に、
台本に情景描写的なものが殆ど書き込まれていないので、
その時間や場の変化が全く分からないというのが、
あまりお話が盛り上がらなかった、
大きな原因であったように感じました。
松たか子さんの役柄が一旦自殺未遂で死にかけたり、
瑛太さんの役柄が一旦引きこもりになったりして、
舞台上から消えてまた再登場するのですが、
その間にもナレーションで登場したり、
別の役柄を演じたりもするので、
そこも混乱の一因のように感じました。
松尾さんと松さんが東京で再会する場面など、
曲も良くてとても素敵なのに、
あまり観客の心に響かないのも、
その辺りに原因があったのではないでしょうか。
松たか子さんは最近の映画での吹っ切れたような芝居が素晴らしくて、
第二の黄金時代ではないかしら、
と密かに思っていて、
今回の芝居でもその歌声や表情など素晴らしかったのですが、
今回の役柄が松さんの本領発揮のものであったかと言うと、
いささか疑問で、
もっと舞台ならではの演技表現が、
観たかったのが本音です。
現在を代表する個性的な演技派が、
3人顔を揃えたと言って良い芝居なのですから、
もう少し演技の魅力に奉仕するような、
劇作であるべきではなかったでしょうか。
そんな訳でとても心地の良い観劇ではあったのですが、
正直物語世界にはかなり物足りなさを感じたお芝居でした。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2019-03-03 09:39
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