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新薬イメグリミンは糖尿病治療の切り札か? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
イメグリミン.jpg
2015年のDrugs R D誌に掲載された、
糖尿病の新薬についてのそれまでの知見をまとめた総説です。

その薬の名前がイメグリミン(imeglimin)です。

イメグリミンはこれまでにないメカニズムを持つ、
糖尿病治療のブレイクスルーになることを期待されている新薬で、
飲み薬ですが、
今のところ2015年以降はあまりめぼしい論文が発表されていません。

フランスのポクセル社の開発品で、
日本では大日本住友製薬と提携し、
現在日本でも第3相の臨床試験が施行されているところです。

イメグリミンは複数の作用により、
糖尿病を改善する薬です。

2型糖尿病の主な病態は3種類あります。

ブドウ糖を細胞が利用する時に必要なホルモンである、
インスリンの不足と、
インスリンの効きが悪くなること(インスリン抵抗性)、
そして肝臓からの糖新生の増加です。

これまでに多くの糖尿病治療薬が開発されていますが、
概ねこの3種類の病態のうちの1つに主に働くもので、
この3つの病態全てを改善するものはありませんでした。

たとえば、インスリンの注射はインスリン不足は改善しても、
インスリン抵抗性は改善せず、
高インスリン血症を惹起するので、
低血糖は起こりやすく、
動脈硬化も進行しやすいという欠点がありました。

一方でこのイメグリミンは動物実験において、
膵臓のインスリン分泌細胞を保護してその減少を抑制し、
血糖上昇に依存性にインスリン分泌を刺激します。
また、肝臓や筋肉においてインスリン抵抗性を改善して、
ブドウ糖の取り込みを促進し、
肝臓でのブドウ糖の産生も抑制します。

つまり、いずれも動物実験での知見ですが、
2型糖尿病の3種類の病態を、
全て改善するという可能性が示唆されたのです。

それでは、何故単独の薬剤にこのような作用があるのでしょうか?

これは実際は明確には分かっていないのですが、
この薬剤はミトコンドリアに作用して、
その働きを正常に保つような働きがあるようです。

糖尿病の病態には、
その全てにおいてミトコンドリアの機能異常が、
関連しているという仮説があります。

これまでミトコンドリア機能を改善することで、
糖尿病の病態を改善するような薬はありませんでしたから、
この仮説が事実であるとすると、
イメグリミンには糖尿病の病態を、
本質的な意味で改善する働きがある可能性があるのです。

それでは、臨床的なイメグリミンの有効性は、
どの程度のものなのでしょうか?

この点についてはその効果は意外にマイルドで、
通常量のメトホルミンやDPP4阻害剤(シタグリプチン)と、
ほぼ同等程度の血糖降下作用やHbA1c低下作用が臨床試験で報告されていて、
現在用量を変えて、メトホルミンに上乗せするような形での、
臨床試験が複数進行(一部は終了)しているようです。

イメグリミンは本当に夢の新薬となるのでしょうか?

その結論までにはまだ多くの道のりがありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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