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「十二人の死にたい子どもたち」(ネタバレ注意) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
12人の死にたいこどもたち.jpg
沖方丁(うぶかたとう)さんの小説を、
倉持裕さんが脚本を書き、
堤幸彦さんが監督した話題の映画が今公開中です。

12人の集団自殺を希望する少年少女が、
廃病院に集まるという話で、
キャストは杉咲花さん、新田真剣佑さん、北村匠海さん、
橋本環奈さんと、
人気者が顔を揃えています。

以下少しネタバレがありますが、
鑑賞後は多分多くの方がガッカリしますので、
先に読んで判断して頂いても、
特に問題はないかも知れません。

これは原作を先に読んでいたのですが、
原作は正直とても詰まらなくて、
読み続けるのが苦痛でした。

冲方丁さんは歴史小説の名手で、
「天地明察」などはとても面白かったのですが、
この作品はこの作者にとって初めての現代物ミステリーという触れ込みです。
ただ、この作者は正直ミステリーというものが、
分かっていないと思います。

この話は基本ラインは「12人の怒れる男」で、
そこに萩尾望都さんの名作「11人いる」が混ざっているのですが、
その余分の1人がどうやって病院の中に入ったのかが、
一番のミステリーの謎になっています。

この謎が全く読者の興味を惹くようなものではありません。

どうでもいいですよね。

このどうでもいい謎を、
本格ミステリー風に矢鱈とボリュームを使って、
ああだ、こうだ、と議論するのですが、
退屈で読むに耐えません。

そもそもミステリーというのは、
「悪」を描くジャンルだと思うのです。

それが冲方丁さんのこの小説には、
「悪」の要素が1つもなく、
皆が良い人で良い行いしかしていません。

勿論こうした小説があっても良いですし、
ラストのある種爽やかな感じなどは、
冲方さんならではのものだと思うのですよね。

決して悪くはないのです。
ただ、これはミステリーではありません。
ミステリーでないのに、
ミステリーもどきの議論を、
長々とやっているのがまずいと思うのです。

さて、この退屈な原作を、
映画版はほぼ忠実に再現しています。

原作のリライトという意味で、
倉持さんの脚本は良く出来ていると思います。

堤幸彦さんはご存じのように職人肌で多作で、
作品にはかなりのムラがあり、
三池崇史監督ほど極端ではないですが、
好きで作っている作品以外に、
やる気も興味も熱意も感じられない、
お仕事と割り切って作っているような作品が少なからずあり、
面白いものもある一方で、
落胆を覚える作品も多いのが実際です。

この作品に関しては、
あまり乗り気な仕事であったとも思えず、
多分監督自身も、
この原作が上出来とは、
思っていなかったと思いますが、
それでもかなり根気良く、
丁寧に仕上げていたと思います。

この作品が詰まらないのは、
従ってその多くが原作にあると思います。

ただ、橋本環奈さんの役に関しては、
せっかくある種の仕掛けがあるのですから、
もっと上手く活かして欲しかったな、
とは思いました。
原作の通りなのですが、
後半ほぼ出番なしという感じなのが物足りません。
ここは原作を変えて、
もっと見せ場を増やして欲しかったな、
と思いました。

そんな訳で詰まらない映画でしたが、
思ったほど映画としての落胆はありませんでした。
あの原作では仕方がありません。

でも、予告編はずるいですね。
あれじゃバタバタ殺し合いが起こりそうでしょ。
そんな話では全くありません。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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