LDLコレステロールと中性脂肪低下との関連(アポB仮説) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2019年のJAMA誌に掲載された、
コレステロールと中性脂肪を下げることの、
それぞれの意義についての論文です。
コレステロール、
特に悪玉コレステロルと呼ばれることのある、
LDLコレステロールを、
低下させることが動脈硬化疾患の予防に繋がる、
という知見はほぼ確立されています。
特に心筋梗塞などの再発予防や、
心血管疾患のリスクの高い糖尿病の患者さんでは、
スタチンという薬剤によって、
血液中のLDLコレステロールを低下させることが、
有益な治療であることが、
各種のガイドラインにも記載をされています。
一方で中性脂肪に関しては、
中性脂肪が高値であると、
それだけでも動脈硬化進行のリスクとなることは、
疫学データや観察研究などでは多く報告されていますが、
薬剤などで中性脂肪を下げることにより、
コレステロールのように明確にそのリスクを下げる効果は、
確認をされていません。
ただ、コレステロールも中性脂肪も、
形は違えど身体で利用される脂質であることには違いはなく、
同じアポ蛋白という一種の乗り物に乗せられて、
リポ蛋白という構造で血液中を運ばれている、
という点では同じです。
このアポ蛋白にも種類があって、
その役割が異なり、
コレステロールや中性脂肪の数値自体よりも、
それを運んでいるアポ蛋白の方に、
より大きな意味があるのではないか、
という考え方もあります。
アポ蛋白A1が主にHDLコレステロールを運び、
アポ蛋白Bが主にLDLコレステロールを運んでいるので、
LDLやHDLの数値の代わりに、
アポBとA1の比率を用いるという指標が、
推奨されたこともありました。
こうした指標の有用性が決してなくなった訳ではありませんが、
最近はあまりそうした報告を目にしません。
現状LDLコレステロール値の有用性が確立しているので、
それに代わる指標としての重要性が、
一般臨床においては見出し難いことが、
その主な理由であるように思います。
ただ、LDLコレステロールを充分に低下させても、
それだけでは脂質異常症の患者さんにおける心血管疾患のリスクを、
正常と同じにすることは出来ないので、
そこに付加される指標が必要であることも、
また事実ではあるのです。
今回の研究では、
北アメリカとヨーロッパにおける、
63の疫学データをまとめて解析して、
中性脂肪が低くなる遺伝子素因と、
LDLコレステロールの低くなる遺伝子素因の、
心血管疾患リスクとの関連を比較検証しています。
中性脂肪を低下させる遺伝子素因も、
LDLコレステロールを低下させる遺伝子変異も、
いずれもアポ蛋白Bを低下させるので、
その低下と心血管疾患リスクの低下との関連を検証しているのです。
その結果どちらの遺伝子素因も、
心血管疾患リスクの低下に結び付いていましたが、
それは同じレベルのアポ蛋白Bの低下と結び付いていて、
アポ蛋白Bの変動で補正すると、
その心血管疾患リスクの低下は消失してしまいました。
要するに、
LDLコレステロール低下療法も、
中性脂肪の低下療法も、
その有効性はLDLコレステロールや中性脂肪の数値よりも、
アポ蛋白Bを低下させることが、
その効果の本質である可能性がある、
ということを示唆する結果です。
アポ蛋白Bの増加はそれ自体の血管内皮への接触が、
動脈硬化の誘因となるという仮説もあり、
今後はアポ蛋白Bの測定が、
一般臨床においてもより重要な役割を果たすことになるかも知れません。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2019年のJAMA誌に掲載された、
コレステロールと中性脂肪を下げることの、
それぞれの意義についての論文です。
コレステロール、
特に悪玉コレステロルと呼ばれることのある、
LDLコレステロールを、
低下させることが動脈硬化疾患の予防に繋がる、
という知見はほぼ確立されています。
特に心筋梗塞などの再発予防や、
心血管疾患のリスクの高い糖尿病の患者さんでは、
スタチンという薬剤によって、
血液中のLDLコレステロールを低下させることが、
有益な治療であることが、
各種のガイドラインにも記載をされています。
一方で中性脂肪に関しては、
中性脂肪が高値であると、
それだけでも動脈硬化進行のリスクとなることは、
疫学データや観察研究などでは多く報告されていますが、
薬剤などで中性脂肪を下げることにより、
コレステロールのように明確にそのリスクを下げる効果は、
確認をされていません。
ただ、コレステロールも中性脂肪も、
形は違えど身体で利用される脂質であることには違いはなく、
同じアポ蛋白という一種の乗り物に乗せられて、
リポ蛋白という構造で血液中を運ばれている、
という点では同じです。
このアポ蛋白にも種類があって、
その役割が異なり、
コレステロールや中性脂肪の数値自体よりも、
それを運んでいるアポ蛋白の方に、
より大きな意味があるのではないか、
という考え方もあります。
アポ蛋白A1が主にHDLコレステロールを運び、
アポ蛋白Bが主にLDLコレステロールを運んでいるので、
LDLやHDLの数値の代わりに、
アポBとA1の比率を用いるという指標が、
推奨されたこともありました。
こうした指標の有用性が決してなくなった訳ではありませんが、
最近はあまりそうした報告を目にしません。
現状LDLコレステロール値の有用性が確立しているので、
それに代わる指標としての重要性が、
一般臨床においては見出し難いことが、
その主な理由であるように思います。
ただ、LDLコレステロールを充分に低下させても、
それだけでは脂質異常症の患者さんにおける心血管疾患のリスクを、
正常と同じにすることは出来ないので、
そこに付加される指標が必要であることも、
また事実ではあるのです。
今回の研究では、
北アメリカとヨーロッパにおける、
63の疫学データをまとめて解析して、
中性脂肪が低くなる遺伝子素因と、
LDLコレステロールの低くなる遺伝子素因の、
心血管疾患リスクとの関連を比較検証しています。
中性脂肪を低下させる遺伝子素因も、
LDLコレステロールを低下させる遺伝子変異も、
いずれもアポ蛋白Bを低下させるので、
その低下と心血管疾患リスクの低下との関連を検証しているのです。
その結果どちらの遺伝子素因も、
心血管疾患リスクの低下に結び付いていましたが、
それは同じレベルのアポ蛋白Bの低下と結び付いていて、
アポ蛋白Bの変動で補正すると、
その心血管疾患リスクの低下は消失してしまいました。
要するに、
LDLコレステロール低下療法も、
中性脂肪の低下療法も、
その有効性はLDLコレステロールや中性脂肪の数値よりも、
アポ蛋白Bを低下させることが、
その効果の本質である可能性がある、
ということを示唆する結果です。
アポ蛋白Bの増加はそれ自体の血管内皮への接触が、
動脈硬化の誘因となるという仮説もあり、
今後はアポ蛋白Bの測定が、
一般臨床においてもより重要な役割を果たすことになるかも知れません。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2019-02-04 05:58
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