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局所的感染症情報(2019年1月後半) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

今日は久しぶりに局所的感染症情報です。

クリニックのある品川周辺でも、
インフルエンザの感染が急増しています。

この傾向は年明けすぐから始まり、
1月9日から12日くらいの時期においては、
38.5度以上の発熱で受診された患者さんの、
ほぼ全例がインフルエンザA型の感染という状況になっています。

先週15日以降くらいになると、
同じような発熱と咽頭所見があり、
ほぼインフルエンザに間違いがないと、
臨床的に判断したケースにおいても、
迅速診断は陰性のケースが時々見られるようになっています。

15日の外来終了の時点で、
1月5日以降当クリニックで診断したA型インフルエンザの患者さんは、
233名に上っています。
これはここ3年においては最も多い数字です。
ただ、勿論全例で検査をしているという訳ではありませんし、
迅速検査は当てにならないケースもあることは承知しています。
これはあくまでトータルな数字ではなく、
ほぼ間違いないと想定されるケースのみの集計です。

流行初期においては、
ほぼ全例で症状は一致していて、
急な発熱と寒気、関節痛が見られ、
その前日くらいから咳き込みが見られるのが特徴です。
鼻水は通常ないか軽微です。
発熱当日においては、吐き気が見られることが多く、
お子さんは嘔吐することがありますが、
胃腸炎症状は伴っておらず、
吐き気自体は一時的です。

咽頭後壁のリンパ濾胞の所見で、
インフルエンザの感染が鑑別可能という報告が幾つかありますが、
僕の経験的な印象としては、
あまり当てにならないというのが実感です。

今年は肺炎など重症の事例が多いと、
都内で救急をされている先生からお聞きしましたが、
現状は幸いクリニックでそうした患者さんには遭遇していません。

これは例年のことですが、
ある程度流行が進んだ時期においては、
症状はかなり幅にあるものとなり、
典型的でないものが多く混じるようになる、
という傾向が見られます。
典型的な症状経過であっても、
迅速診断で陰性のケースもあり、
微熱やだるさ、下痢など非典型的な症状経過であっても、
検査が陽性となることもあります。

勿論全ての事例に迅速診断をするべきでない、
という意見のあることは承知していますし、
症例に合わせた個別の判断をしているつもりです。
ただ、臨床診断や咽頭所見よりは、
迅速診断の方が当てになるというようには思っています。
迅速診断が普及した時期においては、
インフルエンザの症状には思ったより多様性がある、
という意見や、
咽頭所見などの臨床所見は当てにはならない、
という意見を専門の先生の多くが表明をされていたと記憶していますが、
最近では迅速診断の乱用を戒めるという意味もあって、
迅速診断より咽頭所見や臨床症状を重視する、
というご意見の方が多いようです。

末端の臨床医としては悩むところはあります。

さて、今のA型インフルエンザ流行の主体は、
A(H1N1)pdm09、
つまり2009年に新型と言われたタイプによるもののようです。

こちらをご覧下さい。
インフルエンザ流行状況.png
これは東京都の感染症情報から引用したものですが、
昨年末辺りから、
流行の主体がA(H1N1)pdm09に移っていることが分かります。
この時点では2割はA(H3N2)、所謂A香港型ですが、
現時点では9割以上はH1N1になっていると思われます。

このタイプのウイルスには、
非常にワクチンの有効性が高く、
そのためここ数年目立った流行がなく、
むしろ変異したA香港型が流行の主体であったのですが、
今シーズンに関してはその傾向が逆転していて、
ワクチン接種者にも感染者が多いことから考えると、
まだ報告はありませんが、
H1N1のウイルスに何らかの変異が生じた可能性が、
高いのではないかと思います。

今週以降、
品川周辺では徐々に終息に向かうことが予測されますが、
まだまだ感染者は多い状況ですので、
皆さんも咳エチケットや手洗いには、
充分留意して生活をされるようにして下さい。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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