「私は、マリア・カラス」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
伝説的ディーヴァ、マリア・カラスの伝記映画が、
今公開されています。
マリア・カラスは崇拝されている方も多いのですが、
来日したのは1974年ですから、勿論生では聴いていませんし、
録画や録音も最盛期の状態の良いものは、
殆どないのが実際です。
残っている録音はかなり状態の悪いもので、
昔の録音の通例で、
カラスの声は金属的なキンキン声のようにしか聞こえません。
晩年の復活リサイタルの映像は残っていますが、
楽譜は無視して、
誰でも出るような中音域を、
無意味に伸ばして拍手をもらったり、
トリルの部分をやたらに伸ばして拍手をもらう、
というような、
僕の感じるベテラン歌手の悪いリサイタルの典型で、
とても希代のプリマとは思えません。
ただ、録音では声質というのは、
本当の意味では分からないもので、
歌舞伎の6世歌右衛門丈なども、
生の舞台を観たのは一度だけですが、
その声質は録画で聞いたキンキン声とは、
まるで異なる趣のある美声でした。
従って、カラスの藝術の本質も、
生の声を聴いた人しか分からないというのが、
僕の個人的な意見で、
録音だけを聴いてカラスを崇拝するような人も、
多くいらっしゃるのですが、
「本当に分かるのかしら」と思うのが本音です。
さて、今回の映画は最新の技術を用いて、
過去の映像を修復して色を付け、
それに声を載せることで、
最盛期のカラスの舞台を、
部分的にせよ再現しているのが一番の見どころです。
確かに舞台に登場した瞬間などは、
実際にその場に立ち会っているように錯覚する感じがあります。
ただ、これは作り手の感覚と、
僕が個人的に観たいと感じるものとに乖離があって、
舞台で演技している姿の映像や音声は殆ど皆無で、
比較的長尺なのは、
「カルメン」のハバネラや「ノルマ」のファーストアリアを、
リサイタルで歌う姿なので、
「もっと本当の舞台で演じ歌う最盛期のカラスを観たい」
という僕の希望を叶えてくれるような映像ではありませんでした。
唯一「トスカ」の2幕のアリアは、
その部分だけの抜粋ですが実際の舞台の映像と音声が登場していて、
そこはなかなか堪能しました。
ただ、せめてスカルピオとのやり取りを、
繋げて欲しかったな、とは残念に思うところです。
映画でも「オペラ歌手は演技が重要」という意味のことを、
カラス自身が言っているのですが、
それを見せてくれるような映像が、
登場しないのが物足りないのです。
映画の内容自体は、
主にテレビのインタビューと、
実際のニュースなどの映像をつなぎ合せ、
そこにカラスの回想や手紙の文章をナレーションで流すだけのもので、
格別目新しい情報はありませんし、
カラスの秘められた実像、というようなものは、
ほぼ何もなかったように感じました。
そんな訳で興味深い映像はあり、
オペラファンとしては楽しめる部分はありましたが、
トータルには「看板に偽りあり」
という感じの平凡な作品であったように思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
伝説的ディーヴァ、マリア・カラスの伝記映画が、
今公開されています。
マリア・カラスは崇拝されている方も多いのですが、
来日したのは1974年ですから、勿論生では聴いていませんし、
録画や録音も最盛期の状態の良いものは、
殆どないのが実際です。
残っている録音はかなり状態の悪いもので、
昔の録音の通例で、
カラスの声は金属的なキンキン声のようにしか聞こえません。
晩年の復活リサイタルの映像は残っていますが、
楽譜は無視して、
誰でも出るような中音域を、
無意味に伸ばして拍手をもらったり、
トリルの部分をやたらに伸ばして拍手をもらう、
というような、
僕の感じるベテラン歌手の悪いリサイタルの典型で、
とても希代のプリマとは思えません。
ただ、録音では声質というのは、
本当の意味では分からないもので、
歌舞伎の6世歌右衛門丈なども、
生の舞台を観たのは一度だけですが、
その声質は録画で聞いたキンキン声とは、
まるで異なる趣のある美声でした。
従って、カラスの藝術の本質も、
生の声を聴いた人しか分からないというのが、
僕の個人的な意見で、
録音だけを聴いてカラスを崇拝するような人も、
多くいらっしゃるのですが、
「本当に分かるのかしら」と思うのが本音です。
さて、今回の映画は最新の技術を用いて、
過去の映像を修復して色を付け、
それに声を載せることで、
最盛期のカラスの舞台を、
部分的にせよ再現しているのが一番の見どころです。
確かに舞台に登場した瞬間などは、
実際にその場に立ち会っているように錯覚する感じがあります。
ただ、これは作り手の感覚と、
僕が個人的に観たいと感じるものとに乖離があって、
舞台で演技している姿の映像や音声は殆ど皆無で、
比較的長尺なのは、
「カルメン」のハバネラや「ノルマ」のファーストアリアを、
リサイタルで歌う姿なので、
「もっと本当の舞台で演じ歌う最盛期のカラスを観たい」
という僕の希望を叶えてくれるような映像ではありませんでした。
唯一「トスカ」の2幕のアリアは、
その部分だけの抜粋ですが実際の舞台の映像と音声が登場していて、
そこはなかなか堪能しました。
ただ、せめてスカルピオとのやり取りを、
繋げて欲しかったな、とは残念に思うところです。
映画でも「オペラ歌手は演技が重要」という意味のことを、
カラス自身が言っているのですが、
それを見せてくれるような映像が、
登場しないのが物足りないのです。
映画の内容自体は、
主にテレビのインタビューと、
実際のニュースなどの映像をつなぎ合せ、
そこにカラスの回想や手紙の文章をナレーションで流すだけのもので、
格別目新しい情報はありませんし、
カラスの秘められた実像、というようなものは、
ほぼ何もなかったように感じました。
そんな訳で興味深い映像はあり、
オペラファンとしては楽しめる部分はありましたが、
トータルには「看板に偽りあり」
という感じの平凡な作品であったように思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2019-01-20 10:59
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