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一過性脳虚血発作と軽症脳卒中に対する抗血小板剤の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
TIAと軽症脳卒中の抗血小板療法.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
軽症脳卒中後の抗血小板剤の2剤併用療法の効果についての、
メタ解析の論文です。

一時的に言葉が出なくなる、手に力が入らなくなる、
などの症状が出現して改善する、
一過性脳虚血発作と、
虚血性脳卒中と診断されるも軽症で、
退院の時点では全く後遺症はないか、
あっても軽微で日常生活には制限は生じない
(modified Rankin Scaleという指標で0か1)
軽症虚血性脳卒中においては、
後遺症はないか軽微であっても、
その後より重篤な脳卒中に進行したり、
再発して予後の悪化するリスクが、
高いことが知られています。

そのため予後の改善目的で抗血小板剤による治療が行われます。

こうした場合に最も多く使用されているのは、
低用量のアスピリンで、
それ以外にクロピドグレルやシロスタゾールも使用されています。

一方でこうした場合の予後改善には、
単剤の抗血小板剤では不充分で、
2種類の抗血小板剤を併用する必要があるのではないか、
という意見があり、
アメリカの専門家のガイドラインの1つでは、
弱い推奨として、
アスピリンとクロピドグレルを発作後24時間以内に開始し、
それを21日間継続する、
という治療法が記載されています。

これまでに3つの精度の高い臨床試験が、
アスピリン単独と併用療法を比較しています。
アメリカのみで行われた比較的小規模な試験と、
アメリカとヨーロッパ、オーストラリアなどで行われた大規模臨床試験、
そして中国で行われた大規模臨床試験です。

今回の研究はその3つの臨床試験を併せて解析したメタ解析で、
この問題の現時点での一定の結論を導くことを目的としています。

トータルで10447名の臨床データをまとめて解析した結果として、
一過性脳虚血発作と軽症虚血性脳卒中発症後24時間以内に、
クロピドグレルとアスピリンを併用すると、
アスピリンの単独使用と比較して、
総死亡のリスクには有意な影響を与えずに、
非致死性脳卒中再発のリスクが、
30%(95%CI: 0.61から0.80)有意に低下していました。
ただ、中等度もしくは重度の頭蓋内以外の出血のリスクは、
1.71倍(95%CI: 0.92 から3.20)
と有意ではないものの増加する傾向を示しました。
併用療法とアスピリン単独との差は、
開始後10日から明確になり、
21日間を超える使用では有用でないと推測されました。

要するに、
一過性脳虚血発作もしくは軽症虚血性脳卒中発症後、
24時間以内にアスピリンとクロピドグレルの投与を開始すると、
アスピリン単独の場合と比較して、
患者さん1000人当り20人の脳卒中の再発を予防可能です。
その一方で同じ1000人当り2人には、
中等度以上の出血系の合併症がそのために発症します。
この効果を得るためには10日以上の使用が必要である一方、
21日以上の併用には意味がないと考えられます。

これまでの臨床試験においては、
クロピドグレルの用量は1日75ミリグラムから600ミリグラムと、
かなりの幅があり、
その使用法も初期量のみ多くするなど試験により様々です。

今回の検証により、
一定期間の併用療法の効果は、
ほぼ確認をされたと言って良いので、
今後その用量や期間を含めて、
適切なガイドラインが、
日本を含めて作成されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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