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唐十郎「腰巻お仙 振り袖火事の巻」(2018年小林七緖演出版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が外来を担当し、
午後2時以降は石原が担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
腰巻お仙.jpg
流山児事務所の小劇場過去の名作上演の一環として、
唐先生の初期作の「腰巻お仙 振り袖火事の巻」が、
唐組などとは全く肌合いの違う、
小林七緖さんの演出で、
先日早稲田の地下の小劇場で上演されました。

この芝居は1969年の年初に新宿中央公園で無許可上演された事件が、
あまりにも有名ですが、
内容的には佐藤信さんの一連の鼠小僧次郎吉や、
喜劇昭和の時代といった革命演劇にとても近いスタイルで、
ディテールには主人公が耳を切られたり、
少女が軍服や赤い腰巻姿などに変身を繰り返したりと、
如何にも唐先生という部分はあるのですが、
全体の構成はその後の紅テントのお芝居よりも、
その後の黒テントのお芝居に相似している印象です。

唐先生のロマン主義的なスタイルが完成するのは、
矢張り「少女仮面」や「少女都市」くらいの頃からで、
「吸血姫」ともなれば、
もうまごう事なき唐芝居の大作なのですが、
1968年から1969年初頭辺りの作品になると、
黒テントの革命演劇と、
見分けるのは難しい感じの世界観となっています。

今回の芝居の演出は、
それ自体黒テントの芝居に近いスタイルで、
そこに天野天街さんのテイストが、
散りばめられているという感じですが、
このお芝居に関しては、
その後の紅テントのスタイルで上演するよりも、
黒テントスタイルの方が合っている、
という感じが強くしました。

オープニングに幕がバンと落ちて、
インパクトのある場面が現れる呼吸も良いですし、
オリジナルの劇中歌も、
「ある夕方のこと…」というテーマ曲は、
なかなか素敵でした。
曲の感じも状況劇場というより、
林光さんによる黒テントという感じでしたね。

今回の上演は概ね原作戯曲に忠実ですが、
オープニングとエンディングに、
特別出演格の大久保鷹さんと主人公の少女による、
「現在から1969年を再定義する」的なパートが創作で入り、
犬が紙芝居で笛吹童子を解説する、
という入れ事が付け加わっています。
また、初演で四谷シモン演じたおつたの台詞は、
少しアレンジが加えられています。

こうした改変はあまり好みではありませんが、
現代の観客に今回の上演の意味合いを、
理解してもらうという面では、
やむを得ないものかなと感じました。
それほど原作を壊す感じにはなっていなかったのが幸いでした。

キャストもなかなかで、
初演で麿さんが演じたドクターともなると、
さすがに普通に演じては役不足で詰まらないのですが、
主役の少年少女の2人は、
雰囲気のある芝居で素敵でした。
大久保鷹さんの自由な芝居も嬉しいところです。
黒テントだとご町内の三人組に当たる3人の堕胎児役の3人が、
なかなかしっかりと芝居をしていたので、
それで全体はぎゅっと引き締まった感じでした。
今回の功労者だと思います。

そんな訳で結構楽しむことの出来た、
地下小劇場らしいお芝居でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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