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卵巣嚢腫と卵巣癌の超音波所見 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
エコーによる卵巣腫瘍のスクリーニング.jpg
2018年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
超音波所見で卵巣癌がどれだけ判別可能かを、
検証した疫学データの論文です。

卵巣癌は予後の悪い癌の1つとして知られています。

そのために腹部超音波検査において、
通常は悪性とは考えにくい、
充実性部分のない卵巣の嚢胞であっても、
悪性である可能性が100%は否定出来ないとして、
経過観察の方針がとられることが多いのが実状です。

しかし、本当にその方針は、
理に適ったものなのでしょうか?

その点を明らかにする目的で今回の研究では、
アメリカの医療保険の大手の1つである、
カイザーパーマネント社の医療データを活用して、
骨盤の超音波検査所見と卵巣癌の診断との関連を検証しています。

トータルで72093名の骨盤超音波検査を施行した女性を観察したところ、
そのうちの1043名で卵巣腫瘍が検出され、
その後に210例が卵巣癌の診断となりました。
閉経前と後に関わりなく、
充実性の部分を含まない単純性嚢胞の所見は、
卵巣癌の診断と関連を持っていませんでした。
一方で充実性の部分を持つ囊胞性腫瘍と充実性腫瘍は、
卵巣癌のリスクを明らかに増加させていました。

今回の大規模な検証から明らかなことは、
卵巣の単純性の嚢胞病変については、
基本的に癌との関連はほぼなく、
経過観察も必要がない可能性が高い、
ということです。

そうは言っても見落としを恐れる医者の立場としては、
どうしても過剰な観察を行いがちなのですが、
今後こうした知見を元に、
明確な経過観察のガイドラインが作成されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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