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三環系抗うつ剤少量投与の腰痛緩和効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アミトリプチリンの慢性背部痛への効果.jpg
2018年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
古くからある抗うつ剤を少量で使用して、
原因不明の腰痛を治療しよう、
という臨床試験の論文です。

ぎっくり腰や長引く腰の痛みは、
ヘルニアによる神経の圧迫など、
明確な原因が分かることは実は少なく、
その多くは慢性腰痛のようにしか、
西洋医学的には表現出来ないような症状です。

この慢性腰痛に対して、
オピオイドや非ステロイド系消炎鎮痛剤などの薬剤や、
体操やリハビリなど多くの治療が試みられていますが、
確実と言えるようなものはありません。

そして、以前から経験的に使用されることがあるのが、
少量の抗うつ剤を使うという治療です。

自律神経のバランスの乱れや交感神経の緊張、
筋肉の緊張の亢進などが、
こうした慢性疼痛の原因として想定されるので、
それを調整する作用のある薬剤として、
抗うつ剤が注目されたのです。

これまでに多くの抗うつ剤が使用されていますが、
その有効性は充分に科学的に検証されているとは言えません。
抗うつ剤をうつ病に使用する常用量で使うと、
便秘やふらつき、口渇などの副作用が強く使用が困難なので、
結果としてこうした目的には少量を使用するようになります。
しかし、実際には少量の抗うつ剤の効果が、
精度の高い臨床試験で確認されたことはありません。

今回の研究では、
慢性腰痛の患者さん146名を、
患者さんにも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分け、
一方は三環系抗うつ剤であるアミトリプチリン(トリプタノール)を、
1日25ミリグラムという少量で使用し、
もう一方はメシル酸ベンズトロピンという抗コリン剤を使用して、
6ヶ月の治療効果を比較しています。

例数は少ないのですが精度の高い試験で、
これまでにこの分野ではあまり行われたことのないものです。
抗うつ剤は口の渇く副作用があるため、
同じように口の渇く薬を対照薬として使用しています。

その結果、
治療開始6ヶ月の時点での、
疼痛や活動のしやすさに有意な改善は認められませんでした。
ただ、治療3ヶ月の時点での活動のしやすさには、
抗うつ剤群で有意な改善が認められました。

これは充分な効果とは言えませんが、
これまで経験的に行われて来た治療に、
一定の有効性が確認された意義は大きく、
今後の更なる検証に期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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