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コレステロール降下剤による空腹時血糖増加作用(2018年韓国の疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スタチンの空腹時血糖.jpg
2018年のCardiovascular Diabetology誌に掲載された、
スタチンというコレステロール降下剤と、
血糖上昇との関連を、
個々のスタチン毎に検証した、
韓国の疫学データの論文です。

スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤で、
強力なLDLコレステロールの低下作用を持ち、
その使用により、
心筋梗塞などの心血管疾患の、
予防効果のあることが実証されている薬剤です。

ただ、有効性の確立している一方で、
多くの有害事象や副作用のある薬でもあります。

その中で体重増加作用と、
新規の糖尿病の発症リスクを増加させる作用については、
スタチン自体のターゲットである、
HMGCRという酵素の阻害作用自体にその原因のあることが、
遺伝子の解析からほぼ明らかになっています。

HMGCRの活性のみが低下する変異のある人では、
スタチンを使用するのと同じように、
体重増加や糖尿病のリスクが増加することが確認されたからです。

このようにスタチンという薬のメカニズム自体が、
どうやら新規糖尿病の発症リスクと、
関連を持っているということは分かりました。

ただ、それでは複数あるスタチン製剤の間で、
その影響に差があるのかどうか、
と言う点や、
スタチンによる糖尿病新規発症のメカニズムが、
具体的にどのような経路を介するものなのか、
というような点については、
まだ情報は限られています。

たとえば日本以外ではあまり使用されていない、
ピタバスタチン(商品名リバロなど)は、
臨床データ上は糖尿病の発症リスクを上げないと、
メーカーの担当者は言われていますが、
それが実際に薬剤の特徴によるものなのか、
それとも単純に薬剤の効果の弱さや、
使用頻度の少なさによるものなのかは、
明らかではありません。

スタチンは実験レベルでインスリン抵抗性の増加作用が、
報告されていますが、
それが臨床的にも事実であるかどうかも、
まだ分かってはいません。

今回の研究は韓国において、
国民レベルの医療データベースを活用して、
各種のスタチンの使用経過と、
空腹時血糖の上昇との関連性を検証したものです。

379865名の登録時点で糖尿病のない一般住民を対象として、
そのうちのスタチンを使用した96182名の空腹時血糖の上昇率を、
スタチン未使用と比較したところ、
スタチンの使用量が多いほど、また使用期間が長いほど、
空腹時血糖は上昇が認められました。
このスタチンによる空腹時血糖上昇効果は、
スタチン以外のコレステロール降下剤である、
フィブラートやエゼチミブでは認められませんでした。

個々のスタチンで見ると、
アトルバスタチンとシンバスタチンで強く、
ロスバスタチンとピタバスタチンも弱いものの有意な増加が認められましたが、
プラバスタチンやロスバスタチンは単独では有意には認められませんでした。

このようにスタチンによる耐糖能への影響が、
比較的早期に空腹時血糖の上昇でチェック可能な可能性がある、
と言う知見は臨床上有用な知見で、
今後はそうした時のどのような対応が、
適切であるかの検証に進んで欲しいと思います。

スタチンの種類と血糖上昇効果との関連については、
確かに薬剤ごとの違いがあるようにも見えますが、
コレステロール降下作用の強いスタチンで、
単純に血糖上昇効果も強い、
というようにも見えるので、
これも今後より精度の高い検証が必要な事項であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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