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尿酸値と食事との関係について(アメリカの住民データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
痛風と食事との関係.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
血液の尿酸値に与える食事の影響を検証した論文です。

血液の尿酸値が高い高尿酸血症は、
関節の強い痛みを伴う炎症である痛風の原因となります。
尿酸の高いことは痛風以外にも、
高血圧や心血管疾患、
肥満、慢性腎臓病などの生活習慣病とも、
関連があると報告されています。

健診などで尿酸値が高いと、
食生活を気を付けるように指導が行われることが通常です。

アルコールを控え、清涼飲料水や赤身の肉、
貝などの摂り過ぎにも注意するように言われます。

しかし、実際にどの程度こうした食事の内容と、
血液の尿酸値との間には関連があるのでしょうか?

血液の尿酸値の個人差を決めているのは、
SNPと呼ばれる遺伝子の単一塩基の変異が25から40%で、
残りの60から75%は、
食事などの環境要因と、
より広範な遺伝子の関与する体質である、
と考えられています。
ただ、実際のそのうちに占める食事の比率は、
あまり明確には分かっていません。

今回の研究はアメリカにおいて、
ヨーロッパ系の16760名の住民データを、
複数の疫学データから、
抽出してまとめて解析したもので、
食事習慣と遺伝が血液の尿酸値に与える影響を、
検証しています。

ここでは痛風や腎臓病のある患者さんは除外されています。

その結果、
アルコールや清涼飲料水、ジャガイモ、肉類の摂取量が、
尿酸値の増加と関連のあることが確認されました。
一方で卵、ナッツ、乳製品、雑穀、柑橘系を除く果物の摂取量は、
尿酸値の低下と関連していました。
しかし、尿酸値の個人差に対する食事の影響は、
その変動の0.3%程度にとどまっていました。
他方、一塩基の違いによる遺伝的な影響は、
その変動の23.9%に関連していると計算されました。

このように、
今回の研究では血液の尿酸値に与える食事の影響は、
遺伝的な影響と比べると遥かに少ない、
という結果になっていました。

これは痛風などの病気のない集団での検討なので、
痛風の患者さんではまた別の結果になる、
という可能性もあります。
ヨーロッパ系の人種に限った解析である、
という点にも注意は必要です。

ただ、それでもこれまでの常識より、
尿酸値に与える食事の影響が、
遥かに小さいという今回のデータの意義は大きく、
今後更なる検証を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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