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何故今年もインフルエンザワクチンは足りないのか? [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で外来は午前中のみですが、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はどうしても今納得のいかないことについて、
取り敢えずの情報をまとめておきたいと思います。

インフルエンザワクチンが今年も足りません。

昨年(2017年)はインフルエンザワクチンが不足して、
現場は大混乱となりました。

その主な理由は選定したワクチン株が上手く増えずに、
途中で方針が変更されるなどして供給が遅れ、
特に接種開始の10月1日の時点で、
通常であれば1000万本が供給されるべきところ、
700万本程度しか供給されず、
最終的な製造量も例年より低い水準に留まったことが、
その主な原因と説明をされています。

ただ、公の説明ではいつもの3分の2は、
10月1日の時点で供給されていた筈ですが、
現場の実感としては、
前年の半分程度しか出回らなかったように思います。

その反省を元に、
今年は充分な供給量が確保されると、
今年の8月くらいの時点では説明をされていました。

こちらをご覧ください。
インフルエンザワクチン見込み製造量.jpg
今年のワクチン接種の公的な検討会の資料です。
今年のワクチンは10月1日の時点で、
例年通りの1000万本を供給する、と説明されています。

ただ、この図をよく見ると、
平成30年のワクチンの製造量は、
トータルでは不足した昨年並みになっています。
つまり、例年より少なく作ることが、
ほぼ予定されていることが分かります。
更には11月初めくらいの時期で見ると、
不足した昨年と同じ2000万本程度しか製造せず、
その時点では従来より500万本近く少ない、
という予測になっています。

現場に混乱なく、充分な供給量を確保するには、
平成28年と同程度の製造量とその製造のタイミングが、
必須であるように思われるのに、
実際には初動量が昨年より多いだけで、
その後の推移やトータル量は、
不足して大混乱した昨年と、
ほぼ同じ水準にする、という予測になっています。

何故こんなことをするのでしょうか?

そのアリバイのために、
次のような図が用意されています。
こちらです。
インフルエンザワクチンの需給バランス.jpg
これもかなり酷い図だと思うのです。
何を根拠としたのか、
医療機関の需要予測という線が引かれていて、
それより今年の製造量は常に多いので、
不足は生じないという理屈が示されています。

しかし、この図の需要予測というのは、
不足で大混乱した昨年の量より、
更に少ない設定になっています。
つまり、この図が正しいのであれば、
昨年もインフルエンザワクチンは不足する筈がない、
ということになってしまいます。
しかし、実際には大きな不足が生じたのです。

何故わざわざほとんど根拠もなく、
こんなグラフを作成するのか、
はなはだ疑問です。

僕はお上や業界のトリックに、
やすやすと引っ掛かるような馬鹿なので、
10月1日が来るまで、
今年はインフルエンザワクチンの不足は生じない、
というように思っていました。

ところが、
蓋を開けてみると、
ワクチンを直接納入している卸さんからは、
昨年と同量のワクチンしか入荷はしませんでした。

充分に供給されている筈なのに、
これはどうしたことかと卸さんの担当者に聞くと、
次のような答えが返って来ました。

「実は今年のワクチンは昨年と同じ量しか作っていないのです。
それはワクチンメーカーが、
ワクチンが余って損をするのを嫌い、
それしか作らないと決めているからです。
従って昨年と同じ量しか入荷はしません。
ワクチンが出そろうのは12月に入ってからです」

この発言を聞いて仰天しました。
そんな馬鹿なことがあるかと思って、
別の卸の会社の方にも聞いてみましたが、
ほぼ同じ回答が返って来ました。

これは勿論担当者の発言ですから、
事実であるとは限りません。
しかし、今の僕の立場でそれ以上の情報の入手は困難です。

ただ、よくよくそうと分かってから、
最初の需給の予定図を見ると、
そこに既にそうした計画が示されている、
ということが分かりました。

2年前までは11月の初めにはワクチンがほぼ出揃うように、
頑張って生産が急ピッチで進められていたのです。
昨年も同じペースのつもりでしたが、
製造に失敗して供給が遅れました。
その遅れたペースと同じに、
今年の予定が組まれていることが分かります。

つまり、メーカーにとっては、
その方が都合が良いのです。
昨年の結果を見て、
「この方が都合が良く楽に儲かる」と判断した企業は、
適当な理屈をつけて、
同じことを今年もやっているのです。

知らないのは現場の馬鹿ばかり、
という訳です。

愕然としました。

今後、インフルエンザワクチンは、
12月にならないと需給は安定しない、
ということになるようです。

ただ、もしそうなら、現行の状態、
10月1日から一斉にワクチン接種を開始し、
いつ接種してもいいですよ、
というような方法は成り立たないことになります。

そもそも季節性インフルエンザワクチンは、
いつ打つのが良いのでしょうか?

10月から1月までのいつに打つべきなのか、
その指針を何1つ示していないということが、
まず行政の不作為の大罪であるように思います。

どうせこのような需給状態なのであれば、
ワクチンは10月、11月、12月と、
グループ分けして接種することが合理的、
ということになります。

こうした状態であれば、そのための指針が必要なのです。

それを何ら提示しないで、
ワクチン不足の原因を、
過剰に在庫をため込んだ医療機関のせいにするというのは、
あまりに破廉恥なやり口ではないでしょうか?

インフルエンザワクチンは今年も足りません。

しかし、今年の不足は明らかな人災であって、
末端の医療者にはその手掛かりさえ与えられてはいないのです。

皆さんはどうお考えになりますか?

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

(付記)
メーカーが儲かる、というのは適切ではないかも知れません。
余ったワクチンは国が買い取る、
といったような話も聞いたことがあるからです。
ただ、仮にそうであるとしても、
トータルに現場や接種者の利便制を犠牲にして、
昨年のような量を昨年並みのスケジュールで生産した方が、
企業にとって利便制がある、
という判断には違いがないように思います。
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