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唐十郎「黄金バット~幻想教師出現~」(唐組・第62回公演) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
黄金バット.jpg
唐組の第62回公演として、
状況劇場の終わり近くの1981年に初演された戯曲が、
唐先生自身の関わる舞台としては、
37年ぶりに再演されました。

初演の時は高校生で、
神保町の書泉グランデでポスターを見て、
観に行こうかどうしようかと、
迷ったことを覚えています。
でも結局は行きませんでした。
僕の状況劇場の初体験はその翌年の「二都物語」の再演です。

2014年に初期の唐組のメンバーが多く在籍する劇団、
オルガン・ヴィトーでテント芝居として上演されていて、
僕はその時に一度観ています。
その時の舞台は原作をかなり改変していて、
セットや美術も貧相なものでしたが、
原作の持つかなり特異でダークな雰囲気は、
しっかりと感じることが出来ました。

この芝居は唐先生の多くの戯曲の中でも、
そのグロテスクさや暗い情念、
ヒロインの造形の複雑な危うさのような物で際立っています。

代表作とは言えないのですが、
ある種の爛熟味というのか、
状況劇場の後半、非常に内省的な時期の、
他にはない暗い魅力があるのです。

今回の唐組による上演は、
久保井研さんと唐先生のコラボによる演出が、
原作の戯曲をオリジナル通りに、
繊細に立ち上がらせているのが素晴らしく、
舞台装置も美術も音効も、
全体にやや小粒な感じは否めないのですが、
完成度が高く原作に忠実に再現されていて、
アングラの精髄を感じることが出来ました。

今回は唐組としては非常に舞台も大仕掛けで、
ラストには外のポールを使った宙乗りがあり、
小ぶりながらモグラタンクもしっかりと登場します。
屋体崩しのタイミングも、
小気味よいほどの素晴らしさです。
多分唐先生の舞台でこうした宙乗りなどの仕掛けが登場するのは、
30年以上ぶりだと思います。
これにはとても感動しました。

役者陣は、勿論ヒロインの藤井由紀さんを含めて、
唐組の生え抜きが頑張っていましたし、
客演も内野智さんに月船さららさんといぶし銀のセンスです。
特に狂気の女教師を演じた、
月船さんの怪演が素晴らしく、
この舞台をワンランク上のものにしていました。
また、初演では唐先生自身が演じたかまいたち役の岡田悟一さんが、
熟練した唐芝居独自の悪党を、
惚れ惚れとする質感で演じていました。
こちらも拍手喝采の出来映えです。

客席はかなりシルバー度の高いものでしたが、
アングラ芝居の精髄を蘇らせて後世に伝えるような希有の舞台で、
シルバー世代に独占させておくのは勿体ないと思います。
是非幅広い世代の皆さんに観て頂きたいですし、
「これぞアングラ!」というある種の演劇的奇跡を、
その目に焼き付けて頂きたいと思います。

昔を知る者としては、
全体にちょっと小粒ですけれど、
でも素晴らしいです。

アングラ好きの方には必見です。
楽しいですよ。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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