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妊娠中の3種混合ワクチンの胎児への効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
Tdapの妊娠中の接種効果.jpg
2018年のJAMA誌に掲載された、
妊娠中に3種混合ワクチン(Tdapワクチン)を、
お母さんに接種することのお子さんへの効果についての論文です。

3種混合ワクチン(Tdap)というのは、
百日咳とジフテリアと破傷風のトキソイドを混合したワクチンで、
この3種類の病気に対する予防のために使用されるものです。

日本においては、
そこに不活化ポリオの抗原を混合したものが、
4種混合ワクチンとして使用され、
生後3か月齢から合計4回の接種が定期接種として行われています。
そしてDTワクチンと言って、
3種混合ワクチンのうち百日咳のトキソイドを除いた、
ジフテリアと破傷風のトキソイドのみのワクチンを、
11から12歳時に追加接種として行っています。

しかし、この方法では、
百日咳の免疫は早期に低下してしまうので、
年長児から成人の百日咳が増え、
それが小さなお子さんにも流行するという危険を除外出来ません。

そこでアメリカなどにおいては、
思春期や大人用の3種混合ワクチン(Tdap)が、
日本のDTワクチンの代わりに10代で接種されています。

更に2013年にアメリカのCDCは、
妊娠中の女性に27から36週の時期に、
3種混合ワクチンを接種することにより、
新生児の血液中の百日咳毒素に対する抗体価を高め、
3か月齢以前に発症する百日咳を予防しよう、
という方法を推奨しています。

振り返って日本においては、
未だにDTワクチンの接種が継続されていて、
DTワクチンを3種混合ワクチンに切り替えるという検討は、
既に2010年には開始されて、
臨床試験も行われているのですが、
まだ足踏みのまま時が流れています。
妊娠中の3種混合ワクチンの接種も、
勿論公式には認められていません。

それはともかく…

アメリカにおいては妊娠中の3種混合ワクチンの接種が,
認められはているものの、
それが実際に胎児の免疫を賦活しているかについては、
あまり実証的なデータが存在していませんでした。

今回の研究はその点を明らかにしようとしたもので、
妊娠27週から36週の時期に3種混合ワクチンを接種した、
妊娠中の女性312名を、
接種しなかった妊娠中の女性314名と比較したところ、
出生時に臍の緒から採取された血液での、
新生児の血液中の百日咳毒素に対する抗体価は、
ワクチン接種群で有意に増加していて、
未摂取群の平均でおよそ4倍に上昇しており、
その効果は妊娠27から30週で接種した場合に、
最も高値となっていました。
厳しい基準で勘案しても、
ワクチン接種群の6割で感染予防レベルの免疫が認められ、
一方で未接種群では12%の新生児しか、
そのレベルの免疫を保有はしていませんでした。

このように妊娠後半期における3種混合ワクチンの接種が、
新生児の百日咳予防に有効であることはほぼ間違いがなく、
今後日本においてもその適応については、
慎重に検討する必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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